とある道端で
スラム街のとある道端で子供たちが何かに群がっている。ぱっと見、追いはぎか何かと思えばそうではない。聞こえてくる声はいたって賑やかな幼い声ばかり。その声の中心に彼女、ミレイユ・カミュが子供の目線に合わせて屈み込み、一枚の写真を周りにいる子供達に見せていた。「ねぇ君たち、このお兄さんしらないかな?」
「だれだれ?」
「あーシセイだぁ!」
「あっ本当だ!」
子供たちはミレイユが探す人物、シセイの写真を見ようとぎゅうぎゅうとおしくらまんじゅうの様に詰めかけてくる。
「まま、待って待って!!」
子供とは言え、数人がいきなり集まれば普段訓練をしている彼女でも押し潰されてしまう。子供たちに悪意が決してないとは言いがたいが…。そうこうしている内にミレイユの姿はなくなり、見えるのは写真を握りしめる右腕のみ。
「ぎゃははっシセイ変な顔ー!」
「顔がくしゃくしゃだねっ」
つい写真を持つ手に力が入ってしまい、テンからこっそり借りてきたシセイの写真が子供達の言う様な姿に成り果ててしまったのだ。気づいたミレイユが子供達をゆっくり退かした後、改めて確認する。
「ぁああ〜〜シセイさんの写真がっ」
ミレイユがうなだれていると一人の少年が肩をぽんぽんと叩く。
「あの…お姉さんはシセイに何の用?」
「何って?」
涙目だったミレイユは今までの仕事を思い出す。
「ああっ!!忘れてたっハチヤさんに頼まれて捜して…ねぇ君、シセイさんどこに行ったかな?」
「えっと、あっちだよ」
「ありがとう!!」
一度バッと走りだしたミレイユだったが急に止まり、子供達に振り返るといそいそと戻ってきた。
「君たち、本当にありがとう」
そう言うと彼女は肩からかけている鞄から紙袋を取り出す。すると紙袋からは美味しい焼きたてのパンの香が漂い、その紙袋を目の前の少年に手渡す。
「これミーティスさん…綺麗なお姉さんが作ってくれたすごくおいしいパンなの、よかったら皆で食べて」
じゃあ、ありがとうと手を振りにこやかな表情のまま走り出す。が、足元の瓦礫につまずき彼女は笑顔のまま綺麗に地面に減り込んだ。
それをおいしいパンの香を嗅ぎながら、少年は思わず呟く。
「お姉さん、パンツ見えてるよ…」
「つーか鈍臭さ!!」
スラム街のとある道端での出来事でした。
2011/12/17
制作:サラキさま