仏の顔も三度まで
「レイリス!」「うぉっ!」
突然訪れた衝撃。体に回された腕や直前の声から察すると、どうも背後からリアに抱きつかれたらしい。思わず男らしい声が出てしまうほどの勢いで。
とまあ、冷静に状況を分析したレイリス。大きく溜息をついた彼は、首だけを回してリアの様子を――正確には、彼女の服の状態を確認した。
「また、随分と派手に……」
「ほんとにごめん!」
服が泥や砂にまみれているのはまだいい。問題は、殆ど取れそうになっている袖。辛うじて繋がってはいるようだが、肩が見えてしまっていた。
ゆっくりと体に回された手を外して向き合うが、リアは俯いていた。僅かに震えている体から、涙を堪えていることは容易に想像できる。
「リア」
静かに名前を呼べば、大袈裟なほどに跳ねる肩。その様子に苦笑して、レイリスはしゃがみ込む。見上げれば、涙を湛えたリアと目が合う。
「リアは動物が大好きなんでしょう?」
「……うん」
「それと同じで、私も裁縫が大好きなの。だから、気にしないで」
手を握りながら微笑めば、どうやら堤防は決壊した模様。あ、やばいな、と思ったときにはもう遅く、リアは堪えていた涙を存分に流しながらレイリスに抱きついた。
因みに、リアがここまで申し訳なく思うのにも理由がある。リアがレイリスに服の補修を頼むのは、三時間振り。そう、三時間前に直してもらった服を、再び破いてしまったのである。
二度あることは、三度ある。
その言葉通り、次にリアがレイリスの元へ泣きながら走ったのは、このやり取りの五時間後のことだった。
2012/03/23
制作:雲房十時さま