Crack Clock - NPC
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Not doing but being.

 イージドールから、ルイスを怒らせたという連絡が来たのが朝。ルイスの八つ当たりを覚悟して店を開けたものの、彼女は来なかった。

 シセイから、ルイスの機嫌が悪くて怖いと泣きつかれたのが昼。彼女の八つ当たりは、どうやらシセイに向けられたらしい。
 話を聞けば、イージドールが他の女の匂いを纏って朝帰り。仕事の関係で仕方が無い部分があるとはいえ、せめて匂いを落としてから帰れ! というのが被害者シセイの叫びである。

 荒れた甥をどうにか宥めて追い返した夕方。
 店を閉める準備をしていると、店先が何やら騒がしいことに気付いた。カウと悪戯小僧の戦いはいつものことなので、放置を決める。
 だが、間もなくして入ってきた人物は、予想外の人間だった。

「……スラム街を一人で歩くなと、何度言えば分かる?」
「ごめんなさい。でも、会いたかったから」

 柔らかく微笑むのは、シェリフルール。少し髪が乱れているのは、きっとカウのせいだ。イヤリング、ネックレス、ブレスレット。職業柄、シェリフルールはカラスの本能を擽る物を多く身につけているから。
 髪を整えてやろうと手を伸ばせば、その手を引かれた。そうなると、二人の距離が近くなるのは当然のことで。

「ねぇ、今夜は泊めてくれる?」

 彼女の好む甘い香りの中に混ざる、知らない香り。

(──確かに、これは)

 甘えるように絡められた手をそっと外せば、浮かぶ表情は戸惑い。そんな顔をさせたいわけではないが、誰か他の人間と共にいたのだという証拠とは向き合いたくない。
 誤魔化すようにシリュウはシェリフルールの髪に手を伸ばし、乱れたままだったそれを整えた。
 離れる手を名残惜しそうに眺めていたシェリフルールは、そのまま背を向けたシリュウに慌てて声をかける。

「ねぇ、泊めてくれるの?」
「一人でスラム街を歩いて帰る気か?」

 笑いを含めて問い返せば、彼女は嬉しそうに抱き付いてきて。

 混ざり合った香りからは意識をそらし、ただ、その温もりだけを追った。





2012/02/21
制作:雲房十時さま

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