Crack Clock - NPC
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着せ替え人形の優雅な一日@

「男ってね、ギャップに萌えるの」

 そう言って笑顔で迫ってくるシェリフルールに、ルイスは泣きたくなった。

「ほら、落ち着いて。話せばわかる」
「これ、着てくれたらね」

 話せばわかるとは、何のことか。幸か不幸か、それを突っ込む人間はここにいない。だが、それはシェリフルールの凶行を止める人間が居ないことも意味していた。
 じりじりと後退していけば、とん、と背中に衝撃。振り向かなくても、状況が最悪であることは分かる。

「その……ギャップに今更拘らなくても」

 シェリフルールはどうだか知らないが、少なくとも自分はイージドールと割と良い関係を築けている。今更、ギャップを使って落とそうとしなくてもいい筈だ。
 だから、スカートはともかく、その胸元の開いた服だけは……という願いが届いたのか、シェリフルールは手元の服に視線を向ける。

「……だって、最近シリュウが冷たいんだもの」

 だから、イメチェンするの!
 力強く言い切ったシェリフルールに、ルイスは怒鳴りたくなった。私を巻き込むな、と。だが、恋する乙女の不安が分からないわけでもないので、言葉は飲み込んでおく。

(シリュウ、覚悟しておけ)

 何とか心を落ち着かせたルイスだったが、続いたシェリフルールの言葉のせいで、その努力は水の泡となった。

「そうね……もっと開いててもいいかしら」

 どこが、とは言わないものの、それが分からないほど鈍くはなかった。
 怒鳴りそうになりつつ、何とか丁寧な対応を維持する。

「その……見せるほど無いから」

 ね、と言いながらも切なくなるが、恥ずべき姿を回避するためならば仕方のない犠牲である。
 だが、その言葉が引き金だったらしい。
 ガッとルイスの両手を掴んだシェリフルールは、力強く宣言した。

「作れるから大丈夫よ!」

 全然大丈夫じゃない!
 そう叫ぶ前に、魔の手がベルトへと伸びる。

(ベッド! ベッドになら投げても大丈夫か!?)

 いや、だが、それも少し不安だから、ベッドまで誘導して押さえ込もうか。
 相手が女らしさを集めて固めたような女性であるだけに、ルイスは反撃にも気を使ってしまう。
 だが、考えている間にも侵略は進んでいる。素肌に彼女の手が触れた感覚に、慌てて体を捩って逃げた。同時に、諦めようとしない敵の両手を押さえ込む。

「私が女らしくしたって、シリュウには関係ないから!」

 だから止めろという叫びだったのだが、シェリフルールには関係がなかった。

「まず、ルイスが私の服を着るの」
「だから、着ない」
「それでね、脱がれたルイスの服を私が着るの!」

 ……勢いに呑まれたものの、ルイスは何とか足の長さ(要は、ズボンの長さ)が違うとだけ口にする。が、笑顔で押し切られた。
 ギャップのためなら一着くらい買えばいいし、単純に「萌え」を求めるのならば所謂「彼シャツ」をやれという話。彼女がやったとするならば、同性である自分も落ちる自信がある。

「ギャップってのは口実。私がルイスを着飾りたいだけだから」

 わざわざ耳元で囁かれた言葉は絶望的なもので、添えられた微笑みはとても美しいものだった。





2012/03/23
制作:雲房十時さま

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