着せ替え人形の優雅な一日A
抵抗らしい抵抗もできないまま、服の交換は完了した。足は直に風が当たって寒いし、胸元もシェリフルールの努力のお陰でそれなりに見えなくもない。まあ、見えようが見えまいが、恥ずかしいことに変わりはないのだが。絶望に打ちひしがれ、取り敢えずベッドの上で毛布を体に巻き付けてみているルイス。それとは対照的に、シェリフルールは奪い取った衣服を身に纏い、どこか楽しそうだ。
「ねぇ、似合う?」
「ああ、似合ってるから返してくれ」
「シリュウが可愛いって言ってくれなきゃ、イヤよ」
かなり、ハードルが高い。男装と言っても差し支えがないほど、ルイスの服装は可愛らしさからかけ離れているというのに。ここは、惚れた弱みを盛大に発揮して貰いたいところだ。
更に肩を落としたルイスを気にすることなく、シェリフルールは室内だというのにコートまで羽織ってみせた。
そして、爆弾発言。
「ちょっと、彼のところまで行ってくるわ」
部屋を出ようとしたシェリフルールに、ルイスは慌てた。冗談じゃない。
「また服を貸すから! だから今日は返して!」
服を着て行かれてしまっては、彼女が帰ってくるまでこの恥ずかしい格好で待たなければならないのだ。生憎、ルイスはイージドールの部屋に衣類を置いていない。いや、置いていたのだが、先日、汚して処分したばかりだ。
切羽詰まった攻防戦の最中、更なる絶望がルイスを襲う。
ドアの開く音。
室内女子二人組は扉に手を触れていないので、第三者の登場を意味している。そして、この場所を訪れる第三者など、限られている。
予想が覆されることはなく、部屋の扉も開かれる。
時間が、止まる。
「あ、お帰りなさい」
「……どんな状況だ」
いや、何となくは分かるのだが。
流石に銃は机の上に置いてあるが、それ以外はルイスと全く同じ格好をしたシェリフルール。
ベッドの上で、毛布を体に巻き付けたまま固まっているルイス。
イージドールは、壁際に放置されているシェリフルールの衣服ーーそれも、先程脱ぎ捨てられたばかりの物に目をやった。
「……ルイス」
「着ているが、見せる気は無い」
流石に、服を奪われて下着姿でいられるほど図太くはない。
が、無言で近付いてきたイージドールと、笑顔のまま退室しようとするシェリフルールに、対応を変えた。
「すぐに着替えられる状態なら、見せても……」
……言葉の途中でシェリフルールを捕獲したイージドールに、少しばかり表情が引きつる。
彼女の腕を掴んだまま、再び足を進めだしたイージドール。今度こそ、逃げ道は無い。
「ふふ、頑張ったんだから」
「期待しておこうか」
「しなくていいから!」
毛布に手をかけられて、泣きたくなった。
2012/03/23
制作:雲房十時さま