06
今日は厄日である、とシセイは結論付けた。幼い頃の黒歴史とも言うべき姿を衆人に晒している上、テンの着せ替え人形化。助けを求めようにも、それぞれが自分のやりたいことをやっているか、面白がって見ているか、だ。自力で逃げ出したくても、体格差が邪魔をする。
はぁ、と溜息をついたシセイの肺に僅かばかり残っていた酸素は、エルヴィの猛襲によって絞り出された。
「ぐえっ」
「シセイも鬼ごっこやろう!」
「エルヴィ、シセイ殺す気?」
冷静にテンが突っ込んだおかげで、シセイは新鮮な酸素を吸い込む。今ばかりは、彼女が天使に見えた。手に持っているのが、レース付スカートだったとしても。
息を整えたシセイが、背中をさするエルヴィと無邪気に二人の周りを走り続けるクライドに文句を言おうと息を吸った瞬間、再び不自然な息の吐き方を強いられた。
「ぐえっ」
「シセイさん可愛い〜!」
「ミレイユ、キミもか!」
小さな体から生み出されたとは思えないほどのスピードを殺すことなく、シセイに飛びついたミレイユ。平素ならともかく、今は彼女よりも幼い姿。当然、渾身の攻撃を受け止めきれるはずもなく、運悪く近くにいたエルヴィと頭をぶつけあってしまったシセイ。エルヴィは痛む額をクライドにさすられているが、シセイの両腕はミレイユに拘束されている。先程は天使のようだったテンも、今は笑いをこらえようとして失敗したらしい。変な笑い声をあげる悪魔と化していた。
「……ミレイユ。苦しいし痛い」
自分が何をしたというのだろう。セルの影響を大きく受けてしまっただけで、どう考えても被害者ではないか。それなのに時計屋のクセにと笑われ、馬鹿にされる。髪の長かった頃の姿であるせいで、着せ替え人形と称して女装もさせられる。髪が長いのはクライドだって同じなのに。
げっそりとしたシセイを解放したミレイユは、テンと共に次の衣装を選ぶ作業に入ってしまった。双子も、シセイが自分たちの遊びに加わらないと分かると二人の世界に戻ってしまう。
どこに逃げるのが安全か。そう考えてぐるりと周囲を見渡した時、クライドがトゥーリアとぶつかった瞬間を目撃してしまう。
トゥーリアの手には、おそらく今回のことについてまとめたのであろう紙が握られていた。が、ぶつかった衝撃でなのか怒りでなのか、ぐしゃりと握りつぶされる瞬間を見てしまったシセイはそっと目をそらした。
2012/03/14
制作:雲房十時さま