レモンカード

 鮮やかな黄色を握ったまま、少女は黙って見つめていた。

 彼女の名前はアテネ。一ヶ月前から料理を始めたばかりの女の子だ。最初はどうしてもうまくできなかったお菓子作りも、今では手順さえ間違えなければそれなりに「美味しい」と言われるまでになった。
 アテネにとって、それは何より励みになる。

「よし、今日のおやつはレモンを使おう」

 塩で表面を擦ったレモンを水で洗い流し、皮をすり下ろして果汁をしぼる。下準備はこれでいい。
 卵をよくときほぐして小鍋に移し入れる。卵が入った鍋にバターとお砂糖、レモン果汁を合わせ、弱めの中火にかける。木ベラを取って構えたアテネは、小鍋が温まるのを待った。

「いい匂い」

 手をかざし、表面を確認した彼女は弱火にする。とろみがついたことを確認して火からおろした。擦った皮を合わせて、瓶に移し変えたら……レモンカードの完成だ。
 もう少し冷えたら、ホットケーキの上に乗せるホイップクリームに混ぜてもいいし、クラッカーやパイにつけても美味しそうだ。

 早速、味見を。アテネはスプーンで一口すくってなめてみる。が、

「……っっっ!!」

 彼女はしゃがんで押し黙った。
 ……砂糖は入っているはずなのに。アテネには、少々酸味がきつかったようだ。


即興小説トレーニングのお題
お題:神の沈黙 必須要素:レモン 15分

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