「オメデトウ」
俺がサナエに告白すると言った時に、トウヤに言われた言葉だ。
「いや、早くない!?」
俺は割り箸を思い切り割りながら、トウヤに突っ込みを入れる。割り箸はいい音がして綺麗に割れた。仕事帰りの居酒屋は、一杯やろうとやってきたオッサンやOLたちで溢れ返っている。隣の部屋からはカンパーイとはしゃぐ大人の声が聞こえた。
「御通しです」と店員に出されたもろきゅうをバリッと噛んで、トウヤは呆れたようにそれに返した。
「早くねえだろ、むしろ、いまさらんなッて告白とか……」
ダサすぎとも遅すぎともトウヤは言わなかった。俺は返す言葉もなく、同じようにもろきゅうをひとつ摘む。
俺とトウヤとサナエは、幼馴染だ。幼稚園に上がる頃からずっと一緒。中学生まで同じ学校、同じクラス。それが突然、高校になってトウヤは別の区域の学校に入学し、サナエは同じ学校だったけどクラスが離れてしまった。
そこでようやく、俺はサナエへの気持ちに気づいたのだ。
「ガキの時から見てた俺から言わせてもらえれば、サナエは辛抱してたと思うよ。カタツムリより鈍いお前が自分に振り向いてくれて、喜んだと思う。かと思えば、社会人になっても付き合いが続いてんのに、何で未だに好きの二文字も言えないかねぇ……」
「うるさいな。そう、簡単じゃないんだよ」
俺はやってきたポテトと揚げチーズを同時に頬張る。そう。そう簡単ではないのだ。付き合いが長ければ長いほど、お互いの気持ちは手に取るようにわかってしまう。だからこそ、言えない。
もし、伝える直前に気持ちが変わってしまったら?
もし、断ることができないサナエがいたら?
もし、もし……。
「たられば、なんて考えても無駄だ」
俺の思考をかき消すように、トウヤが言った。
「お前の気持ちは本物だろ。サナエもお前のことが好きだよ。二人をずっと近くで見てた俺が言うんだから間違いねぇよ」
「……トウヤ」
「万が一、億が一、振られたらその時は……」
俺がごくりと唾を飲み込むと、トウヤはいたずらっぽく笑って、
「俺が骨を拾ってやるよ」
俺は無二の親友の言い方がおかしくて、釣られて笑った。