ヤヨイのパトロール

 御手洗ヤヨイ、彼女は今日、はじめて警察官となった。今生で初めての三輪車を買ってもらい、父親の警察帽をかぶり、街へパトロールへと繰り出す。あ、帽子はレプリカです、念のため。

「行ってきます!」
「行ってらっしゃい」

 母親の典子に笑顔で見送られ、いざ出発。キコキコとペダルを踏みながら、街の安全を確認するのだ。小さい足なので、進んでいるのか進んでいないのかいまいちわかりにくいが、進んでいる。

 ヤヨイは父が好きだ。警察官の父はめったに家に帰ってこないが、街の平和を守るためにいつも戦っているのよ。サイバーレンジャーのように。と言って彼女に言い聞かしたおかげで、ヤヨイは父の存在を忘れず、尊敬の思いを胸に抱き、父の真似事をするようになった。
 良かったね、父。

 今日はパトロールは、ヤヨイの家から一番近い公園をメインに回る。ヤヨイはきゅっと帽子の位置を直し、三輪車からかっこつけて降りると周囲を確認した。

「――はっ!」

 ヤヨイは勢いよく跳ねて草むらの影に隠れる。ジャングルジムの向こう側、砂場に妖しい影を発見。急いで応答せよ。少女は典子と一緒に作ったトランシーバーを片手に張り込みを続ける。ちなみにこのトランシーバー、父が禁煙中に吸っていたのが典子にばれた時に没収された箱です。
 妖しい影を追いながら、じりじりと迫りその正体を追うヤヨイ。一メートル近い気の影から、とうとうその姿をはっきりと確認できた。そいつは、

「ニャー!」

 公園の野良猫番長、マメ太!

「お前はすでにほーいされている! ただちにそこから出てこい!」

 マメ太は砂場で用を足した後、素直にでてくると、のどを鳴らしながらヤヨイに近づいた。公園の入り口から見ていた老婆が、「今日も平和だねえ」と呟いた。


即興小説トレーニングのお題
お題:初めての警察官 制限時間:15分

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