「あっちの道だと思う」
「いいや、こっちの道じゃないか?」
「それもさっき通っただろう」
若い男三人が、霧が立つ山の中で言い合いをしていた。男たちは帰り道がわからず、道に迷っていた。山頂へ到達したときには、三人仲良く肩を並べ笑い合っていたというのに。
帰り道、途中まではよかった。ところが、雨と霧で方角を見失い遭難してしまったのだ。焦りと不安から苛立ち、お互い些細なことで喧嘩をするようになってしまった。
とうとう、一人の男が感情を爆発させてもう一人の男の胸倉に掴みかかった。残った男はなだめようと仲裁に入るがそれも二人は聞く耳を持たない。言い合いを続けているうちに三人はぬかるんだ地面に足を取られ、崖の下に真っ逆さまに落ちていってしまった。
「……くそ、くだらない言い合いなんかするんじゃなかった」
一人の男ががっくりと肩を落として呟いた。
「俺も焦ってきつい言い方になっちまった。すまん……」
胸倉を掴んでいた男は足をくじいたのか立てる様子ではない。しかし、大きな怪我はしていないようだ。命あっての物種だと、二人は顔を見合わせて力なく笑った。さっさと三人、元の場所に戻って誰か助けを呼ぼう。戻ったら、うまい団子でも買って食べようじゃないか。
そこで二人はもう一人の男が居ないことに気づいた。自分たちの喧嘩を止めるために仲裁に入った、もう一人の若い男の姿が――。
男は振り返って絶句した。自分の背後に気配がしたので、仲裁してくれた男がどこかに行っていたのだと思ったのだ。しかし違った。そこには大きく太い幹の木があった。その鋭い木の枝には、団子のように男が串刺しになっていたのだ。
二人の男の絶叫が、山の中に響き渡った。