僕たちはきょーだい。

 高校の下校時間は遅い。帰宅部の僕でも、夕方の十七時に授業が終わって、そこから生徒会の役員たちで話し合いが終わるとすでに十八時。

 僕の家は高校からそれほど離れてはいなくて、歩いて十分くらい。自転車を使えばすぐなんだろうけど、そうしないのは毎日「お迎え」が来るからだ。

 スマートフォンを覗くと、相手から一通のメッセージが届いていることに気づいて僕は慌てた。校門の前で待っているという、妹からのメッセージだった。
 早く行かないと。
 この遅い時間に妹一人で待たせるわけにはいかない。ところが、足を進める僕の前に、後輩の女の子二人組が立ち塞がる。

「葵さん……ッ、あの、これ、良かったら召し上がってください!」
「ちょっと、抜け駆けはずるいわよ!」

 バレー部でいつも応援に来てくれる子だ。このまま無視をするわけにもいかないけれど、僕にとって妹の方が大事だ。

「ごめんね、今日は人を待たせているから」

 そう言って片手を軽く上げて謝罪のポーズをとりつつ廊下をすり抜ける。何かまだ背後で言われているような気がしたけど、構わずに校舎の外に出た。

 空にはもう夕焼けの色はなく、とっぷりと日が暮れている。校門の影に、背の低い人影を見つけて、自然と口角が上がった。

「椿! 待たせてごめんね」
「……遅えんだけど」

 静かに怒りを露わにするのは、僕の大切な妹、立花・椿。ランドセルを背負った小学六年生で、男の子のような短い髪に、クールカジュアルな私服。眉間には皺がいつも寄っている癖に、こうして毎日高校生の姉と一緒に帰りたくて待ってくれている、かわいいかわいい、妹だ。

「……生徒会、忙しかったわけ?」

 歩きながら、ジトリと横目で睨んでくる。不機嫌そうな顔をしているけど、彼女にとってこれが普通。別に怒っているわけじゃないのに、こういう顔になってしまうのは、他人の顔色をうかがう癖がついてしまっているから。

 ――心配してくれているんだなあ。
 僕は半ばこそばゆい気持ちになって、椿の頭をそっと撫でる。ぽぽぽと頬が赤くなっていく様に、思わず笑顔になってしまう。

「いいや、一時間くらいで終わったよ。ただ、少し帰りに呼び止められてしまっただけで。それより、今日の晩御飯は何にしよっか?」

 晩御飯、と聞いて椿の表情が輝く。どこからどう見ても育ち盛りの男の子なのに、これで、女の子なんだもんなあ。

 シチューがいい。
 甘えるように言う椿と「任せて」と腕まくりをする僕の影が、振り返れば仲良さげに並んでいた。


即興小説トレーニングのお題
お題:可愛い妹 制限時間:30分

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