身長百八十センチ、体重九十八キロ。
その御曹司の釣書を見た時、書いていた数字に驚いたのはいうまでもない。
「デカッ」
畳の上で寝ころびながら読んでいた私は、思わずボソッと呟いた。御曹司とのお見合いだなんて、どこをどうしたらそんな話が舞い込んでくるのかわからなかったが。昨晩に、ミヤコは同居している祖母からこの釣書を渡されたのだ。
「ミヤコちゃんもいい歳だし、会うだけ会ってみない?」
「いや、私まだ二十二歳だし」
大正生まれの祖母と同感覚で「いい歳」扱いされても困る。しかし、親のいなくなったミヤコにとって、祖父と二人で育ててくれた祖母の話に断り切れず。ミヤコは一週間後にそのでかい御曹司に会うことになってしまった。
御曹司のとの話は、よくよく聞けば近所のおばさんから最終的に回ってきたらしい。西園寺グループという会社の跡取り息子で、年齢は二十二歳。同い年で、釣書に寄れば趣味が漫画とゲーム。学歴は国立の――ミヤコには学がないためよくはわからないがとっても偏差値の高い大学――を卒業しているのだけはわかった。ここまで来て、この御曹司のイメージは……。
「頭がよくてオタク趣味な同い年の体がでかい御曹司……?」
情報量が多すぎるような、逆に少ないようなそんな気もする。
どんな人なんだろう。ミヤコは少し興味が湧いた。お見合いして数か月後に結婚、だなんて。二十二歳の遊び盛りのミヤコにはごめんだったが、ちぐはぐなステータスの青年は、会ってみてもいいかもしれない。普通、釣書には一緒に写真が同封されるものだが、御曹司はよく命を狙われるらしく、防犯のため当日にしか顔がわからないらしい。
それなら、どんな顔をしているのかその面を拝んでやろうじゃないか。つまらなければお茶を飲んでそそくさと退散してやる。
いたずら好きな彼女は、ニヤリと笑うとクローゼットを見返そうと起き上がった。
「ミヤコちゃん、こっちこっち」
あっという間にお見合い当日になった。ミヤコは締め付けられた帯をさすりながら、げっそりとした顔で店へと入る。成人式の着付けでも、こんなに気合を入れて締められはしなかった。祖母のうきうきとした様子に苦笑しながら、ミヤコはやっと会うことになった御曹司に心を弾ませた。
ぶさいくだろうか。清潔にしてくるだろうか。眼鏡はかけているだろうか。ちゃんと話ができるのだろうか――。様々な思いにワクワクしながら、扉を開けた。
「初めまして、西園寺肇と申します。本日はよろしくお願いいたします」
扉を開けてすぐ目の前に正座していた男が立ち上がった。
「デ」
デカ、と言いそうになった口を即座につぐんだ。肇と名乗った、西園寺の御曹司は数字の通りかなりでかい御曹司だった。そして、美しい顔をしていた。
なんだこの、塗り壁にイケメンの顔だけ張り付けたような男は。
「なにか?」
きょとんとした肇が、ミヤコの視線に首を傾げる。いえ、と愛想笑いをしたミヤコはそそくさと席に座った。これは、面白いことになったぞ。ミヤコはニヤニヤと顔をゆがめる。
身長百八十センチ、体重九十八キロ、顔だけイケメン。
ミヤコはひとまず、好きな食べ物から聞いてみることにした。