納骨の時のお箸って、何であんなに長いんだろう。
持ちにくいし、重たいし、肝心な骨がしっかり掴めない。明日菜は灰と化した祖父の目の前でぼんやりとそう思った。コロナ対策でマスクをしているおかげで、粉塵が口の中に入って来ないことが救いだ。
明日菜はじいちゃんっ子だったが、葬式が済んでも悲しさが内の中から一粒も溢れては来なかった。その理由はきっと、毎日のように病院へお見舞いに行って、しっかりとお別れを済ませたからだと彼女は思った。衰弱してく祖父を見るのは非常につらかったが、仕事を言い訳にして顔も出さない実の息子よりよっぽど可愛がりがいのある孫だ、と明日菜は自画自賛した。
足から順番に骨を拾っていく。さめざめと涙を見せる母も、じいちゃんとすすり泣きをする叔母夫婦も大嫌いだったが、我慢した。我慢できた。
泣きも笑いもしない無表情で、明日菜は最後の骨を拾った。
「これも入れて」
明日菜の祖父は、愉快で個性的で、伝説的なおじいちゃんだった。
指を切ったから、急いで病院に行ったせいで自動ドアのガラスを頭で割ったり。トラックで仕事に行ったら同僚を乗せるのを忘れてそのまま帰ったり。明日菜を見守っていたのに、明日菜が転んでも起こさずに「転んだぞ」と言ったり。ぼーっとした人だった。それでも確かに、
「じいちゃん」
誰にも聞こえずに祖父を呼んだ。今更悲しみがやってくる。おかしいね。震える唇を噛んで、明日菜は笑いかけた。いなくなったのにまだいるような、祖父の形をしたものに。