光の軽犯罪

 エネルギーを無暗に使うことが許されなくなった時代。

 人間はかつての便利な生活から、自給自足で生活することを余儀なくされた。温暖化が進み、人類は地球滅亡を少しでも回避するために初めに「電気を使うこと」を禁止した。
 スマホ、洗濯機、冷蔵庫、テレビ……生活ラインから娯楽まで、あらゆるものを。もちろん民たち皆が腰を上げ暴動を起こしこれに反論したが。「地球環境の崩壊がすぐ迫っている」というニュースをまざまざと見せつけられたとき、一人二人と人民は受け入れるしかなかった。
 そして、時は過ぎて行き。

「お前、こんなもんどこから見つけて来たんだよ。そうとうなアンティーク品じゃん」

 懐中電灯にスイッチを入れようとするノブ。暗闇の中でにやっと笑う彼の表情は、影ができてとても不気味だ。懐中電灯は、電池を入れても接触が悪いのかカチカチと音がするだけ。珍しそうにそれを見つめるのは、ノブの親友、カイト。二人は地球崩壊目前世代に生まれた、光を知らない子供たちだ。

「もうちょっとなんだけどなぁ……おっ?」
「おい、ノブ! やったぞ! 点いてる点いてる!」

 わあ、と懐中電灯を揺らして、明るくなった秘密基地。二人は目をきらめかせて、万引きと同罪の行為に興奮していた。


即興小説トレーニングのお題
お題:光の軽犯罪 制限時間:15分

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