「お前、運は良い方か? ギル」
「いいや。お前は? イーサン」
「俺もそう」
ぱらりと足元の砂が谷底へ落ちていく様を見て、イーサンが尋ねた。背中には追手の声が迫っている。
逃げ延びる方法は二つ。
この底の見えない崖を飛び降りるか、追手と真正面から戦うかのどちらかだ。焦る気持ちを抑えながら唾を飲み込む。九十九パーセント、どちらも甘く濃い死の臭いがする。残り一パーセント、より多くの幸運を感じられるのはどちらだろう。
いたぞ。追手の声が聞こえて、イーサンは弾数から崖下を選んだ。
「俺の経験だが……運は自分で引き寄せるもんだ」
「ハッ、間違いねぇ!」
二人は笑って、地獄の底へとダイブした。