300字SS「隠す」

「さ、どうぞ」

 そう言って安佐子が机に出してきたのは、リボンのように捻られたクッキーの山だった。この中に己の明暗を分ける御神籤が入っているのだという。僕は興味なさ気に受け取ると、真ん中から割って中に入っていた紙を広げる。
 そこには――『すき』の二文字。黙ってもうひとつ割ってみると、その御神籤にも『すき』とある。もう一つ、その次の中身にも、同じく「すき」。

 すき、すき、すき。

「もしかして……」

 僕が怪訝な顔をすると安佐子は口元を隠し、

「全部に隠しましたわ」

 そう言って笑う。からかっているのか。本気なのか。そんな悪戯なクラスメイトを可愛いと思う、僕の鼓動は隠しきれない。

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