300字SS「道/路」

#商店街ロード

 こんなに時間が長く感じられたのは初めてかもしれない。
 一緒に帰ろう、と同級生の聡子さんから声をかけられた。女の子と下校するなんて生まれて初めてだったから、気の利いた話もできず困っている。口の中は乾いているのに、手は汗でぐっしょりだ。
 隣で歩く彼女を見た。俯く聡子さんの横顔は幼く、頬は赤い林檎のよう。彼女を見つめるたび、どうして僕なんかと……と、そんな気持ちが胸で騒ぐ。

「晶くん」

 突然名前を呼ばれて変な声が出た。
 どうかした、と尋ねると聡子さんははにかんで、

「緊張しちゃうね」

 と答えるものだから。
 かわいい。
 頭が真っ白になった僕は。その後、何を話したのか覚えていない。

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