300字SS「手」(ケニアと金髪)

「瞳子さんの手、綺麗ですよね」

コーヒーを飲む私を見て、目の前の誉さんが言った。思わず、そうかしらと興味のない声音で言ってしまった。自分の手など、まじまじと見つめた事などない。細く小さく、肌も白いから綺麗だって。私からすれば誉さんの方が、大きくて骨張っていてセクシーに感じる。この手で自分の髪を撫でられたらどうだろう。想像したら胸がざわついた私は利き手を誉さんに突き出した。

「――触ってみる?」
「え?」

戸惑うように私の手を見つめる彼女に、どうぞと言って見つめ返す。誉さんは恐る恐る指を伸ばして、伸ばして、伸ばして、

「や、やっぱりいいです」

顔を赤らめて断ったので私は声を上げて笑った。

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