300字SS「来る」

コーヒー専門のカフェ「アマリリス」。
この店には週に二回、多い時で三回、私の幸せがやって来る。

それはときどき私の心を温めたり、掻き乱したりする、やっかいな人の事。

他の客を席に案内していると、窓の向こうに黒髪が見えて心が浮き立った。
注文を確認したら急いで入口のレジへ回る。だって、あの人を一番先に迎え入れるのは、いつだって自分がいいから。

――カラン。

アイスコーヒーの氷の音か、鐘の音か。
同時に扉が開くとその人は私に気づいて、

「こんにちは……」

恥ずかしそうに目を背けるから、思わず口元が緩んだ。

「瞳子さん!いらっしゃいませ」

私は精一杯の笑顔で幸せを出迎えた。私の愛する、幸せを。

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