コーヒー専門のカフェ「アマリリス」。
この店には週に二回、多い時で三回、私の幸せがやって来る。
それはときどき私の心を温めたり、掻き乱したりする、やっかいな人の事。
他の客を席に案内していると、窓の向こうに黒髪が見えて心が浮き立った。
注文を確認したら急いで入口のレジへ回る。だって、あの人を一番先に迎え入れるのは、いつだって自分がいいから。
――カラン。
アイスコーヒーの氷の音か、鐘の音か。
同時に扉が開くとその人は私に気づいて、
「こんにちは……」
恥ずかしそうに目を背けるから、思わず口元が緩んだ。
「瞳子さん!いらっしゃいませ」
私は精一杯の笑顔で幸せを出迎えた。私の愛する、幸せを。