俺が完璧に振られるまで

 俺が苗字さんの秘密を知ってから、俺が苗字さんを好きだと思った日から、色んな話をしてくれるようになった。
 主にコーチのかっこよさ、苗字さんがどれくらいコーチのことを好きかっていうのを聞かされるのであって、普通に考えれば地獄のような日々だ。当然それをしんどいと思う日もある。
 でも、それ以上に目をきらきらさせながら、話している苗字さんは本当に可愛くて、普段の生活の中じゃ見たことのない顔をいっぱい見られることが嬉しかった。
 このまま独占し続けられたら、この笑顔が俺に向けられたら、いったいどれくらい幸せになれんのかな。

「こないだね、思い切って聞いてみたの」
「何をッスか?」
「私が卒業したら、真剣に考えてくれますかって」
「……何て言ったんスか、コーチ」
「はっきりとは何も言ってくれなかったんだけど、否定の言葉も出なかったから、考えてくれるかもってプラスに受け取ることにした」

 よかったッスね、とは言えなかった。何も良くない。どうせなら、きっぱり拒否して欲しかった。俺は。なんで拒否しねえんだとか、逆ギレの言葉しか頭に浮かんでこない。
 卒業したら、この人はもう一度告白するんだろう。その時、コーチは受け入れるのか。俺は、それを黙って見ているだけか。
 だからと言って、完全な負け戦に挑む必要なんてあるのか。ほんのわずかな希望すらないのに。

「なんで告白しようと思ったんスか」

 苗字さんだって希望なんか無かったはずだ。

「言わなきゃ始まらないと思ったの。希望なんか無いのは影山君もわかるでしょ?」
「……はい」
「言えば、意識してくれるかもしれないって、賭けてみたの。まぁ完全拒否の可能性もあったんだけどさ……」


title:恋したくなるお題

- 7 -
モドル
ALICE+