あの後、…座席を倒され、降谷さんが覆いかぶさってきた後。

ただ、熱い吐息と唇が呼吸すら奪って、私はただひたすら熱に犯されながら降谷さんの名を呼んでいた気がする。気付けば肩で呼吸をしていたのに、降谷さんは止めてくれなかった。それどころか激しくなるのだ。

「…だめだ」


意識が朦朧としてきた時に耳に入った言葉。何が、と聞ける余裕もなく荒い呼吸を繰り返す。一旦運転を再開した彼はどうやらすぐに家に着いたらしく部屋に入ってから寝室まではあっという間だった。


「もう遠慮はしない」


そこからのことはあまりよく覚えていない。ただ、普段の安室透という男からは想像つかないほど急速に求める彼の目は、初めて見る男の目だった。


ーーーー

「…………あ、」

朝、目が覚める。
すぐ隣には開けた服の彼がいた。途端に思い出す昨夜の事。続けて自分が殆ど全裸同様であることに悲鳴をあげそうになる。


寝ている彼を起こさないように静かに起き上がり、まるで忍者かとでも言うように素早く音を立てずに着替え、部屋の端に移動する。


「…む、むり…」


安室…降谷さんが起きたとして、どう接すればいいのか分からない。どういう顔で、何と声をかければいいのか分からない。今ですら、寝ている降谷さんをまともに見られないのに、起きたらどうすればいいんだ…!

「いっそジンから仕事で呼び出されたことにして置き手紙しようかな…」
「…無粋ですね。ここで男の名を出すなんて」
「すみませ………え?」


え!?

ぎくり、と機械のような動きで振り返れば、じっとこちらを見る降谷さんと目が合う。やばい、怒ってる。あれは完全に怒ってる。

「…あの、いつから起きて、」
「貴方が起きる前からです」
「…」
「慌てたように着替える姿が面白くて、つい寝たふりを」
「…ぜ、全部見られて…!」
「でも男の名を出すなんて、朝から妬かせないでください」


そう言う彼の顔は笑っているのに目が笑っていなかった。怖い。やばい。


「昨日のでは、足りなかったと?」

そして、この部屋のこの空気にも耐えられない!


「私、今日はキャンティと仕事があるので、もう行きますね!!」

逃げるように走り去った。