あの後、私はジンに足を撃たれた。

「何で、」

おかしい。あのジンが、頭でもなく、肺でもなく、足を撃つなんて何を考えているのか。殺そうとしている相手の足を撃ったところで、それは致命傷にはならない。私には彼が何を考えているのか、まったく読めなかった。


「せめて、赤井秀一と同じ場所で送ってやろう」


その刹那、私は何者かから麻酔銃を撃たれたらしい。見えなくなっていく視界の中、自分が倒れる感覚だけを残し私は意識を手放した。

―――

来葉峠。
深夜の時間帯のせいか通行車はない。その一端で、私はガードレールに背を預ける形で立っていた。否、使いものにならない足で立つことは困難で、殆ど身体をガードレールに預けていると言っても過言ではない。


「部下の失態は、上司の責任だ」

そう言って笑うジンは崖の上を見る。


「あの馬鹿な捜査官、赤井秀一のもとへ送ってやれ。キャンティ」
「いいのかい?ジン、お前がしとめなくて」
「コイツに銃を教えたのはお前だろキャンティ、部下の失態は上司であるお前がケリをつけろ」
「へぇ…そういうことかい」


意外だった。てっきりジンにより殺されるのかと思ったのだが、まさかここに来てキャンティに狙いを定められるとは思わなかった。私からは姿がよく見えないが、崖の上にいるらしいキャンティは私にライフルを構えているのだろう。高笑いが聞こえてきた。


「恨むなら、哀れな運命を辿った赤井と、その二の舞な己を恨むんだね」


発砲音が響く。

弾丸が飛んでくるのがスローモージョンで見えた。

「…」
避けようにも、負傷した脚のせいで動けない。それに加え、麻酔銃の効き目がまだ残っているようだ、意識や感覚が鈍く、身体が重い。これはもう絶対絶命かもしれない。思い出されたのは、赤井秀一と安室透だった。


自分の視界が赤く染まる。
重心が後ろにずれる。

頭から下に落下していく感覚と共に私は目を閉じた。


――――


ターゲットがガードレール下に落ちていく姿を見たキャンティは楽しそうに笑った。かつて自分が指導した後輩でもあったが、裏切り者、それもFBIであった彼女に情けなどかけるはずもなく、彼女は吐き捨てるように言った。


「頭をぶち抜いたからね、死んだも確実だよ」
「…後で死体を回収させろ」
「了解」


撤退したキャンティを確認したジンは如月海吏が落ちていった方を見て静かに呟いた。

「茶番は終わりだFBI」