目が覚めて、まず見えたのは白い天井。次に視線を彷徨わせれば壁にあるFBIのエンブレムが見えた。点滴の用具がいくつも見え、自分の腕は痛々しいことになっている。更に横から寝息が聞こえ視線を向ければ、視界に入ったのは椅子に座り、器用にも腕と脚を組みながら寝ている赤井秀一だった。


「赤井さん…?」

起こしたら悪いと思いつつ遠慮がちに声をかけるが、眠りは深いようだ。人が動く気配ですら目を覚ましそうな赤井さんが微々ともしない。相当疲れているのだろう。


私は寝たまま、先ほど見た記憶を思い出す。「窓を開けろ、開けるんだキャメル」確かに彼はそう言っていた。それは漫画でもテレビでも見たのだから間違いない。だが、私は「目を開けろ、開けるんだ海吏」なんていう声を聞いた。幻聴かもしれない。原作であまりにも強烈だったから自分を重ねた妄想かもしれない…待って、それは、ちょっと、どうなんだろう…。

いやでも!聞こえた!聞こえたから、死ぬわけにはいかないと思って、私は目を開けたんだ。


赤井秀一。
貴方はもう、漫画の中のかっこいいFBIではない。私の上司の頼れるFBIなのだ。きっと、瀕死の私をここに送り、付きっきりで様子を見ていたに違いない。その証拠に部屋のすぐ外にあるゴミ箱には大量のコーヒーの空き缶が捨ててある。


「赤井さん、ありがとうございます」

赤井さんが未だ深い眠りについているのを確認して、私も目を瞑った。

ーーー

「バーボン、機嫌悪いわね」
「放っといて下さい」
「あら、慰めようと思ったのに」
「余計なお世話です」
「あいつはいつも僕の手をすり抜けていく…今度はどこに消えたんだ、まさか本当に殺されて……なんて考えてるのかしら」

ベルモットが含み笑いをしながら煙草に火をつける。煙がゆらゆらと上がっていくのを目で追い、平然を装っていたが図星のことを言われ安室透は拳を握りしめた。それにベルモットが気付かないはずもなく。


「キャンティは頭を撃ったと言っているし、ジンも間近でそれを見ていた。モニター越しではなく、ね」
「…何が言いたい」
「小細工なんか不可能なあの状況で死なない方が無理よ」
「…っ、」
「組織の裏切り者よ?何をそんなに感情的に………ああ、貴方好きだったみたいね、あの子のこと」


その瞬間、安室透は突き刺すような鋭い眼光を向けた。ジンにも劣らないその目にベルモットは一瞬怯むが「…あら怖い」なんて言って去っていく。一人残された安室透は壁に拳を殴りつけた。