アメリカで存分回復し、車をぶっ飛ばすほどに起死回生を果たした私は赤井さんと共に帰国し、そして作戦を実行させていた。


「公安の車、一台お借りしますよ」

堅苦しいスーツにサングラスを着用。公安のおっさんに変装した私は誰に言うわけでもなく一人ほくそ笑んだ。だが、その笑みはやがてニヤけ顔になる。


いやだって、仕方ないだろう!


「自分から提案しておいてだけど、緋色シリーズに関わるなんて、私結構やばい…!」


しかも、あの後赤井さんから言われた任務は私を高ぶらせるには十分すぎた。赤井秀一が復活する時に、私も共に帰還すると言ったあの時、少し考えるように斜め上を見た赤井さんはやがて私に向き直りこう言ったのだ。


「公安に混ざり先頭で俺達を追ってこい。俺がお前の運転する車のタイヤを撃った時に、上手く車を操作し、後方の車を誘導しろ」
「え?」
「公安の車がガードレールを突き破って落下しないように、な」
「…」
「死人を出すわけにはいかんだろう」

ーーー

そういうわけで私は今、気分が最高潮に達している。ニヤけない方が無理だと思う。安室さんはここで屈辱を受けることになるだろうが、(あれだけドヤ顔決め込んで外すなんて笑ってしまうだろ申し訳ないが)私は腐ってもFBI。FBIと公安の勝負となれば譲れない。


「安室さんからの指示を待て」なんて公安のみなさんは言っている。耳にあるイヤホンに手を付き、いかにも「聞いています」というように頷くが実際私が聞いているのは赤井さんの声だ。

「運転はキャメルだ。彼は公安の追跡を上手く避けるだろうが…追ってこい。勝負はストレートの5秒だ」
「分かりました。死人は出させません。…右タイヤの狙撃、よろしくお願いします」


「了解」

このセリフ……!
あの映画のラストの台詞と同じだ。ちょっと待って私今さらりと名セリフ言われたんじゃ?

赤井さんにそう言われる日がくるなんて思いもしなかった。でもこれは、きっと信頼の証なんだろう。
これはもう完璧に任務を遂行させなくては。気合を入れるため自分の頬叩く。周りの公安に変な目で見られているがそんなのは気にしていられない。


ヒーローの帰還

そこに託された私の役割は大きい。