「何なんですか貴方は。だいたい組織で自由行動が許されているのをいいことにベルモットの生立ちを探りにアメリカに行きそこで無差別テロに巻き込まれあろうことか僕との通話中に狙撃され携帯をぶち壊し単独行動しておきながら失態かと組織に目をつけられそうになるところを僕がフォローしたのにも関わらず着信拒否しかも何やらアメリカで負傷後はあの赤井といたらしいじゃないですか貴方は僕を妬かせる天才らしい」
帰国して安室に会った途端つらつらと長文を捲し立てるように言われた私は頭痛がして思わず包帯を巻いていない手で頭を抑えた。
「聞いているんですか。まったく頭が痛いのは僕の方ですあの時電話が一瞬爆発音を立て直後一切通じなくなった時の僕の心境が貴方に分かりますか心臓が止まるかと思いましたよ色んな意味でね。しかもその後の着信拒否。貴方に連絡を取ろうにもまるで繋がらない」
いやそれ赤井さんに言ってください。拒否設定にしたのあの人だから!
と言っても更にこの男は怒るだけだろう、ここは冷静に対処するしかない。
「すみません、ちょっと、まあ色々と事情があって」
「何ですか、色々って」
「そりゃあ、色々は色々ですよ」
「僕に言えないということは、どうせFBI絡みなんでしょう。いいですよ分かってます、そこまでFBIに拘るのならば僕は貴方を公安に引き摺り込むのみですから」
「いや何で」
話しがおかしな方向にいっている気がする。何なんだこの男、私を心配しているのか、ただFBIが気に食わないのか、私を公安に誘い込みたいのか、ただの嫉妬なのか、はたまたその全部か、まるで分からない。安室透と一緒にいると、まるでこちらのペースを崩される。
「言ったでしょう。アメリカに恩もないのにFBIになり、それでいて日本で動くなんて僕達の邪魔をしたいと言っているようなものでしょう、貴方は能力も才能もある、公安になるべきです。いえ、もっと言えば僕の隣にいるべきだ」
「何でそうなる」
「僕がそうしたいからです」
「意味が分かりません」
自己中心的なのか、そうなのか。
ジト目で横にいる彼を見やれば、そこには予想外の表情があった。何かを真剣に思い悩んでいるようなその表情に、何かが揺らいだ気がした。
「僕もですよ」
「え?」
「僕も意味が分からないんです。初めて君を知ったのは、僕が赤井を車で追っていた時。急にドライバーとして現れたかと思えば、公安の車を次々と振り切っていく。気付けば僕しかいなかった。だが君は僕さえも撒いた。だからどんなお偉い上官かと思えば新人の、しかも若い小娘ときた。この僕が、君に、新人の小娘如きに負けるだなんて屈辱的だったんですよ」
小娘などとはよく言ってくれたものだ、と足を踏んでやろうかと思ったが彼は私を見ることなく何かを思い出すように斜め上を見ながら喋り続ける。こいつ、話すの好きだな。
「それからずっと君が頭から離れなかった。最初は僕のプライドが許さないだけだと思いました。でもね、君を見る度に君をもっと知りたくなった、そして君が赤井といると、何故か苛ついた。それで分かりました、君が優秀だからこそ、公安として僕の隣に立っていてほしいのだと。不思議ですね、僕を撒き苛つかせる天才のくせに、隣に立ってほしいと思うなんて、まるで矛盾している」
本当だよ。
こいつはご丁寧にも心の内を長々と発表してくれたらしいが、私にはよくわからなかった。つまるところ、結局は公安にいてほしい、お前は優秀なのだから、例え過去に負けた相手でも、というところなのだろう。言ってしまえばFBIなんて辞めてしまえ!くたばれFBI!ってことだろう。実に分かりやすい。
で、だ。正直に実力が買われたことは嬉しいが、だからと言って何故こうなる!?
「ですが」
まだあるのかよ、と安室を見れば、彼もこちらを見ていた。視線がばちりとぶつかる。
「それだけだと今回の感情は説明がつかない」
「はい?」
「君が撃たれたのだと悟った時、僕はらしくもなく動揺して、携帯を落としたんだ」
「え、」
「意味が分からないだろう、僕も、よく分からない」
彼の瞳に映る色は一重に困惑だった。