あの後ジンから連絡の入った私は逃げるようにその場を去った。あの場にいたところで安室透に何と言えばいいか分からなかったし、どう反応すればいいのか分からなかった。だから正直ジンに呼び出しを食らって安心した。まさかジンに感謝する日がくるなんて。


それから安室を振り切るように気を引き締めジンを訪れれば、ジンは睨むように私を見た。息を忘れそうなほどの鋭い眼光。

「あの方直々の命令だ」
「…」
「お前がこの前アメリカで巻き込まれた事件。バーボンはお前を評価したが俺は腑に落ちねえ。あの方もだ、そもそもアメリカで何をやっていた」
「情報探りを」
「…ふん、まあいい。次はないぞ…テロでも何でも失態を犯せばお前は異国の地で切り捨てだ」

鋭い視線を向けたまま、壁に背を向けたジンが自身の黒いコートから手を出す。無言で差し出された紙切れに私は二度見した。

異国の地で切り捨て、という言い回しに違和感があったが紙切れがその答えを表していた。日時は明日、行き先はロンドン。………え。


「イギリスへ行き、ヘル・エンジェルについて探れ」

ーーーー

それからは早かった。面白ぐらいに次々と事が運び気付けば飛行機の中で、気付けば異国の空港にいて、気付けば街を歩き回っていた。

アメリカから帰国した途端これだ。私がイギリスにいることを知るのはあの方とジンとベルモットだけだったらしい。安室透に何も告げず飛び立ったのは気分が良かった。まあ、告げようにもタイミングが無かったのだ、仕方なだろう、安室は存分悔しがるがいい。

そんなんだから、安室透を設定拒否にしたままなことを忘れていた。気付いたのはベルモットから電話が来てからだった。

「ねえ、どうにかして」
「どうにかって、」
「彼…、バーボンが煩いのよ。貴方が何も言わずまた外国へ行き、携帯は拒否設定のままだって。聞くけど、何故拒否してるのよ?」


赤井さんにそうされたなんて言えない!
そしてそのまま忘れてたなんて言えない…!

「ああ、しつこくてね」
「…まあ、彼、プライベートで貴方に興味があるみたいだしねえ」
「え?」


含みのある言い方をするベルモットにまさか正体に薄々感づいて…とも思ったがそうではないらしい。彼女の呆れたような声が電話越しに聞こえた。

「鈍いわね」
「…え?」
「彼もそうだったけど、貴方は相当よ。帰国後、覚悟することね」


え?何が?