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「甘やかしてない?」

ぎゃんぎゃんまではいかずとも言い合いながら、悟の話なんてそっちのけで2人で金銭の話をしている姿を視界に入れ、はぁ、とため息をついた。
恵と津美紀は悟から貰ったパックジュースを飲みながら2人の話は聞かないように気を使ってこちらの話に集中している。

「それは、まぁ……」
「お父さんに甘いよねぇ。お父さんも甘いし」
「いつもこんなんなの?」
「あの2人はあんなのです。……お金の話をおおっ広げてしてるのは初めてみましたけど」

悟はあの男が無害な一般人だとは知っている。
問題だらけの伏黒甚爾を呪術師界に縛りつけ、尚且つ強力な術式をもつ伏黒恵を呪術師から逃がさないために呪術師の上層部やらは色々と伏黒家について調べが終わっている。その中で一際無害で無意味で無価値と判断された男が彼だ。伏黒家に居候し子供たちの世話をしながらバイトをして金を稼ぎ生活費に当てて呪術にはなにもわからずにいる男。母子家庭育ち。酒もタバコも必要としていない。最近、生活費がバイトじゃ賄えなくなってきて貯金を崩している。よく笑う。深く考えない。エトセトラエトセトラ………、本人が知らない本人のことまでみっちり資料にかかれていた。
上層部の一部の一部から術式の無い津美紀と一緒に始末してしまおうか、という話が出ていたぐらいに無害すぎてゴミみたいな扱いを一瞬受けていたが、本人は知らないので悟も他も語りはしない。
甚爾にそのことがバレたら娘と隣人をどこかに隠し恵と一緒になって力を振りかざし、一部の命や人権は早々に無くなるので漏らすこともしてはならない。ほぼ禁句の粋になっている。が、悟にとっては一部の奴らのいい感じに弱味が握れたのでハッピー。
その無害が、甚爾に甘い。
そして、あの甚爾に甘やかされてもいる。
悟は耐えきれず、げぇ、と舌を出して気持ち悪さを思う存分表現した。恵からの冷ややかな視線は無視される。

「あ、でも、2人が久しぶりに一緒に楽しそうでちょっと嬉しい」

最近、甚爾は高専で本格的に講師をするための無理矢理な顔見せや規制や規則にサイン、どこまでやれるのかの確認だと言って与えられた無理難題の任務をこなしたりすることに忙しくあったためほぼ家にはいなかった。
恵は師匠である悟と鍛練するため学校が休みになれば家ではなく高専へ。津美紀も中学に入って友達や部活といったことで家にいる時間は短い。
礙之も小学生中学生の子供と大人2人の生活費を稼ぐためにバイトに明け暮れ給料を見てため息をつく回数が増えながら、頭を悩まし、バイトに帰ってゆき、家にいる時間は少なくなる。
みんながみんな、バラバラの時をすごす家。になりつつあった。
子供がお留守番できるまで歳を重ねた共働き夫婦の家庭図にも見えなくないその構図に、密かに寂しさを見ていた津美紀は不謹慎かもしれないけど、と呟きながらふふふと笑った。恵も思い出すようにがらんとした家に悩まし気な顔が増えた家族たちを脳裏によぎらせ、口元を緩める。

「またうるさくなるな」
「私は好きだなぁ。恵も嫌いじゃないでしょ?」
「まあ…」
「今度、お休みにショッピングでも行く?」
「仲良いね〜?」
「五条悟さん、お待たせしました!お話のつづきしましょう!」
「は??本当に?それで??」

甚爾が人殺しそうな目で睨みつけてますけど、あれが終わったにはいるの?とハテナをたくさんとばしながら悟は無害そうに笑っている男に視線をそらした。



後ほど悟が甚爾に聞いた話によると、金銭の分け方が気に入らないらしい。
へー????取り分お前の方が多いのに??とは言わなかった悟は褒められるべきだろう。
 
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