キラキラ輝く氷の塊、我が兄様の眠る美しきインテリア。
それがゆりかごから8年後、スクアーロが久しぶりに再会した本当の9代目の血縁者であり、XANXUSの義理の妹の一言であった。その瞳には愛おしむ色ばかりが見え、憎悪に似たものは鳴りを潜めているようにも見える。
XANXUSの義理の妹、AAAは、10代目にはなれない存在としてボンゴレ内部には知れ渡っていた。元から体が弱く、1日の3分の2を設備の整った病室で過ごさなければ次の日には死ぬかもしれないというぐらいに重い病を得てしまい彼女の1日はずっと病室である。外に出ることもあまりなく、外の情報はお互いに血縁者だと信じていた義理の兄であるXANXUSや、スクアーロから得たものしかなかったぐらいだ。父である9代目の過保護も重なり彼女に権限は与えられなかった。与えられなかった代わりがXANXUSであると彼女は義理だとは知る前まで思っていた。否、真実を知る者以外は全員がそう思っていた。
「インテリア、とは壊すな…という意味か?」
「インテリアは壊すことこそが美しいのよ、美しいなら散り際が一番よ」
「そうか」
白い病室のたくさんの管に繋がれた彼女はゆるく笑い、病気のために短く切られた彼女の髪とは違うスクアーロの伸びた髪をサラサラと弄ぶ。その手さえ細く枯れ木のようだ。
いつの間に、こんなに細くなっていたんだろうか。前にあった時にはここまでじゃなかったはずだ。スクアーロの頭に巡る回想の彼女はもう少し肉つきがよかった。血色も人間味があって、潤む瞳もあったのに、もう朽ちてゆくしかない。
「伸びたわね、8年、そう、8年も経ったのね…」
「そうだなぁ」
「ああ、ずるいわ。みんな行ってしまうんだもの、私も行きたいわ」
日本へ、と続く言葉は低い「おい」という声に遮られた。病室の開け放された戸から入ってきたその声の持ち主であるXANXUSは、スクアーロをちらりと見たがすぐに彼女へ視線をうつしてしまう。その姿は8年前と変わらずに、瞳の奥に燻っているはずのものは等々溢れ爆発した名残が見て取れる。
「準備は出来たのですね、あとはわたしだけ」
「嗚呼」
「お゛ぉぃ…本当にやるのかァ?」
「スクアーロさんったら、やらなきゃ、大丈夫よ。すぐに門外顧問がやってきて保護対象になるんだから」
XANXUSがその言葉に兄妹の2人だけの笑みを見せ、彼女に繋がるたくさんの管をつうっとなぞる。笑みを見てこの2人は止める気などないのだとスクアーロに知らしめた。
これから彼女の管は切られ、XANXUSが義理の妹さえも手にかけたという偽装事実がでっちあげられる。彼女合意の、彼女の提案でもある偽装が。これでしがらみなくXANXUSが動きやすいようになるからだ。力のない死ぬ間際の娘など何につかえようか。
変わらぬ2人の兄妹は、兄だけが変わらぬ姿で8年の時をかけた妹は朽ちる寸前の対にもならぬまま、その似ていない瞳を交わらせては2人同時に過去を馳せた。
「やるぞ」
その重く低い声を聞きながら、彼女はにこにこ笑ってみせる。
「はい、兄様。お元気で」
ブチリ、と音をたて焼き切れた管からは焼かれたゴム特有の匂いがただよい熱をはっしている。機械をうごかしていた何本かの細い管はスクアーロがなんの抵抗も刃に与えずにスパスパ切れてゆく。
なんてことない作業はすぐに終わり、その似ていない視線を絡めてすぐにXANXUSは背を向けた。スクアーロもそれに続いてゆく。これからはじまるのだ。
彼女は笑みを浮かべたまま、その2人の背を眺めていた。





時期に彼女は門外顧問たちが保護対象になり、保護される。そしてXANXUSを止めるために彼女はボンゴレに利用される。
否、彼女が8年かけて練り上げた喜劇に巻き込んでゆくのだ。ゆっくり、着実に、彼女の練り上げた喜劇という名をつけただけの彼女の美しやかな人生計画に。門外顧問に保護されることこそが初めの、彼女の第1章のはじまりなのだから。
管のないAAAは段々と苦しくなる息のまま、ずっと笑みを消すことができないでいた。
「やっと、いきてるって、おもえる」


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