「残念ね、また落馬したの?」
「やぁぐへぇっごほっ」
略奪、強奪を繰り返しながら一方的な喧嘩をしてチャンピオンだなんだと大声でさけんでいるバージェスから離れて視線を巡らせば、白馬のストロンガーから落ちて地面に突っ伏していたドクQが手をひらひらと振りながら手助けを求めるている。残念ながら私の体格と彼の大きさでは不可能なので近づいて昔授業で習った記憶を頼りに回復体位もどきをとらせてやる。もどきなので横に寝るみたいになってしまったが、残念だが仕方がない。この世界にきた特典では、大きくて重い彼を持ち上げる力はつかなかったのだ。
「ドク、血を吐いてるわ」
「AAA〜ふくものをくれよ」
「残念ねハンカチは無いの。リボンでいいかしら」
しゅるりと胸元をかざっていた白いリボンをほどき手渡すと遠慮なく血をふかれてせっかくのそれは汚らしいものになってしまう。この街でまた新しくすればいいか、と思い拭き取りきれていない血や唾をしっかりとってやる。大きなこども、もしくは、大きな年寄りをかまっているようなチグハグな気分になるのもいつものことだ。
「ウィ〜ハッハハ〜!!AAA!お前が嫌いそうな宝石だぞ!」
向こうのほうから投げ捨てるようによこされた連なった宝石達は売れば随分と高値をたたき出しそうな大粒で、私はぐっと眉間にしわがよった。しかし残念なことに私の表情筋は死んでいるのでピクリともしない。
「えぇ嫌いよ、わかってるなら寄越さないで」
「ウィ〜ハハハハッ能面がなぁに言ってやがる!」
「なんですってこの残念な筋肉!弾丸にしてオーガーにうってもらってこればいいわ!そのまま肉塊と一緒に腐り落ちて」
「ごほっ…落ち着けAAA」
そっとドクQの手が落ち着かせるような足に触れたため、蹴り飛ばさないようにふーっと息を吐いた。途中で止まった悪口にバージェスはまたあの笑い方をしてこちらにぽいぽいと強奪した戦利品を投げてくる。これを整理しろということなのだろう。薬品類はまだ倒れたままのドクQにわたした。
この「世界」に唐突に来たとき私は表情をなくした。嬉しくても笑わず、悲しくても泣かず、何を感じてもぴくりともしない顔。口で伝えても目から入る情報として私の好意や嫌悪が伝わることは残念ながらない。身元や変える方法がわからずにいた私に良くしてくれた人達からは、そのせいで君悪がれ蔑まれ結果的にそこからは去らなくてはならなくなった。そこから派生したドキッ!はじめての放浪生活!〜死んだ目(表情は死ぬ)を添えて〜は私とはじめて「キャラクター」を引き合わせた。主人公と対立しているあの「キャラクター」の黒ひげ、マーシャル・D・ティーチだった。なんの運命か因果かわからないが、彼らと行動を共にすることになった私はどうやら「悪」とやらに抵抗がない部類の人間だったらしい。だって、あんな平和な世界にいた平和ボケしていたはずの私が、この海賊に荒らされて街が街ではなくなっていく姿を見てもなにも思わないのだから。バージェスのいる方からの悲鳴や怒号は止まず、あいつがどんどんと標的を変えては暴力を振るっているのが聞いていてわかる。これにもいつも通りだと感じてしまう。
「こちらの分別は終わりました。売れなさそうなのはこの辺です、どうぞ」
「嗚呼、ラフィット。この辺は使えなさそう」
「では好きにしてよろしいですよ」
いつの間にかひょろりとしたラフィットが横にいたがこれもいつも通りなので、いつも通りに強奪してきた中から売れない・使えない・いらない物を私がこの世界にきたときに得た力で売れて使えている物にかえていく。わかりやすく言うならば「武器」だ。銃に剣に斧に…触れば触るほどに変わってゆくものたちは早速袋に詰められていく。これについて私や仲間たちは私の自己申告である悪魔の実は食べた覚えはないということと、海も泳げて海楼石が効かないことを踏まえ、何かしらの条件として得た力として考えている。シリアスに考えるならばこの力には残念ながら期限がありそうで怖いなぁ、というくらいだ。ラフィット曰く気にしないでも良いのでは?とのこと。オーガー曰くそれもまた運命である。とのこと。
「おや、これはオーガーのをモチーフに?」
「銃なんてよく知らないもの、身近なものを参考にしたのよ」
またいい金になりそうだな、とはドクQの声だ。金はあっても困らないし、船や備品がよく(船長をふくむ私たち船員のせいで)壊れてしまう我が船には必要だろう。海軍が使っていたような銃の中に紛れたオーガーの使っているようなスコープ?つきの銃を見てラフィットはにっこりと笑ってみせた。なんだよ、笑顔がうるさいな。
「さぁ、船長が戻ってくるまでいかがしましょうかね」
遠くの方でオーガーと共に無謀にもふっかけてきた海賊を狩っている船長を思い出しながら、ふうと息を吐いた。
たしか黒ひげ海賊団の原作活躍は、なんたらと言う村で「主人公」と会い、その後「主人公」の兄であるエースをとらえるが目先のことではなかっただろうか。はて、世界政府に行く、だったろうか?こちらに来てからも放浪期も随分と長かったため原作の記憶が残念ながら曖昧だ。
「ゆっくりお茶でもしましょう。この辺りの店はがら空きなんだもの」
バージェスの強奪や暴力によって、とは言わずに笑ってみせればラフィットもドクQもうなずいてくれたので比較的崩壊がマシな店に足を向ける。あたり一面崩壊に満ちて、人は倒れて気絶か絶命してるため閑散とした町にすっかりなれてしまっている自分がいる。もうここから逃げも帰れもしないのだろうと、ジワジワと分かってきてしまうのが酷く現実的だ。どうやって帰るのかもわからないのだが。
「さて、なにかいいものあるかしらね」
船長が好きそうなケバブやチェリーパイがあればとっといてあげよう。酒屋っぽいので酒は沢山あるだろうし。バージェスのあの笑い声を背景に酒棚をあさりながら今日の宿はここなのだろうか、とふと思った。ベッドで寝たい。
※元女子高校生トリップ主、「残念」が口癖、ワンピース原作知識ふんわりとある、表情をなくすかわりになんでも武器にできる力(not悪魔の実)を得た
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