※原作知識ありトリップ主
よくあることだ、あのオロチ様がなにかが気に入らなかったらしく顔を真っ赤にして怒り心頭になっているのは。お姉さんたちは顔を青くさせて、逃げ腰なオロチ様の部下の方が沢山いて、酒もご飯もひっくり返って、高そうな屏風が破れている。お手洗いでぬけていた座敷に帰ってきたら、この有様。せっかく無理言って用意してもらったおれの甘味もぐっちゃぐちゃになっている。呆けていたおれに気がついたお姉さんが口パクで「なんとかして」と言うので、できたらうれしいなぁと笑ってかえした。オロチ様がこうなるのはよくあることだし、成功率も半々。
「ただいま帰りましたよぉ、オロチ様」
真っ赤な顔なままオロチ様はこちらを睨むように見て、おれの名前を吠えるように呼ぶ。その咆哮に似たなにかがおれの名前っぽく聞こえたのはこの状態になれている人たちだけで、他の人にはただの声にならぬ叫びに聞こえたんだろう。わかりやすく端にいたお姉さんたちがびくんとはねた。
「今回はなぁにがあったんです?また、くだらんことならほっときゃいいじゃないですか」
「AAA!お前もそんなこと言うのか!」
この返答がきたら嫌なことを言われたから怒っているオロチ様案件だ。これならなんとかなりそうで、わかりやすくてありがたいことにほっと息をはいた。
「いや、オロチ様ぁ、そんなかっかしたって変わりませんよ。もう口から出ちゃった言葉なんですから、ほっときゃいいんですって。」
「わかってないのかAAA!亡霊の話を笑いやがったんだぞ!!」
青い顔した部下さん以外のまわりの部下たちの笑うことをこらえる姿がオロチ様の目に入らないことを願いながら、視線をこちらに向けさせる。悪魔の実の能力をつかわれないことも願いたいものだ。視線が外れたために察してくれた人が原因の人をずるずる引きずって部屋から出してくれたので、そこで少し気がらくになる。
まぁ、亡霊を怖がる理由も、亡霊が生きていることを知っている身としては苦笑いしかでない案件だ。だっておれは知っている。漫画で読んだから。主人公たちを含む光月家がオロチを倒しにきていることも、ワンピース世界でオロチ様は悪であることも、バックにいるカイドウをも主人公たちは敵に回していることも。全てが漫画で読んだ知識。気がついたらワンピースの世界にきてしまって、行く宛のないおれを拾ってくれたのがオロチ様だ。感謝している、恩がある、どこのだれかもわからないおれに裏になにかあるかもしれないがよくしてくれている、彼が主人公に倒されてしまうかもしれない未来があるのも知っている。ワンピースは残念ながら最後まで読みきれなかったためにオロチの最後を知らなが、彼に救われた身としてついていこうという思いはある。まぁ、その、ミーハーな意見をいうと主人公の海賊団には会ってみたいんだが、それはそれ、これはこれってやつだ。
「はいはい、もう、一旦これでこの話はおしまいにしましょう。すいません、ご飯と酒もう一回用意して下さい。あとで屏風も弁償しますね。お腹いっぱいになったらちょっとは気もらくになりますよぉ、ね?」
「だがなぁ!」
「はいはい、はいはい、今は楽しい芸者遊びなんですからそんな怖い顔しないで」
急いで運ばれてきた酒を持たせて、青い顔をある程度マシにしたお姉さんを数人近くに引き戻し酒を注がせたり煽てたり宥めたりしながら意識をずらしていく。もちろん完璧にさっきのことからずらせることはできないにしろ、今ここでしているこの飲みの席ぐらいはいつものオロチ様らしくいてくれるだろう。酒を煽りだしたオロチ様の姿に幾人かほっとして元に戻るぐらいのテンションで飲み直ししはじめてくれたため、こちらもほっと息をつく。周りがつられれば、あとはこの場だけでも保ってくれたらいい。
「相変わらず、オロチ将軍をなだめるのがうまいな」
「わっ、狂死郎さん。そんなことないですよ、たぶんこの飲みの席が終わったら爆発しますね。」
狂死郎さんは違いないと笑ってまた酒を飲みだす。今回はうまくいったが、これ、次もこんなことになったら手がないんだが…、とも思いながらお姉さんが持ってきたありあわせの酒を喉に通した。
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