「はい、これ。今月の家賃」
「あ、ありがとうございます!」
「やだ、もう、普通の家賃よ?そんなかしこまらないでよ」
大家である女子高生の音羽さんが渡した家賃をまるで宝物みたいに受け取るものだから、少し苦笑いがこぼれる。沢山住人はいるのに、綺麗な女性であるリストさんから家賃を払ってもらっているところしか見たことがないため仕方ないのかな、という思考が少し顔を出しては、気にしないでおこうとその顔を押さえつけて片付ける。切り替えて仕事に行かなくちゃいけない。
「じゃあ、私はこれで」
「今日も仕事ですか?」
「えぇ、やんなっちゃうわよね休日出勤だなんて」
「お疲れ様です」
「ありがとう、音羽さんも学校頑張ってね」
ここに居候して小さな会社に勤めている私は仕事場から一番近いって理由だけで駆り出される。仕事は嫌いじゃないしよくあることだから気にはしないけれど、せっかくの休みでこれから買い物を、と意気込んでいたからか少し気分は落ちる。
前からローラースケートでかけてくるモツ?さんと呼ばれているピンクの髪の彼がやってきたので横にずれて道を開ける。
「あ!おっはよー!AAAちゃん!!今日も仕事ー?行ってらっしゃぁああい!!」
と前から横を通り過ぎるまでに捲し立て、ザーッと行ってしまう。朝か元気なことで、本当。後ろか音羽さんの怒鳴る声が聞こえてきたが聞かないふりして足を進める。
「あら、おはようAAAちゃん。仕事?行ってらっしゃい」
「おはようございます、行ってきます」
ホールにいたリストさんとその影に隠れたショパンさんのお見送りに頭を下げながら靴を履く。ショパンさんと目があったことないんだけど、別に嫌われているわけじゃないと、思いたい。横顔を一度見たことがあるがとてもキレイな瞳だったから、一度でいいから合わせてもらいたいものだ。
「おはようございますベトさん、餃子、できましたか?」
「おはようAAA!ああ!最高傑作ができる予定だ!」
「頑張って下さいね」
庭で火力マックスなよくわからない装置を操作しているベト?さんは餃子をつくる人だ。よくわからないがこれで餃子をつくれるとは思えない。まぁ、彼がやるというならば作るんだろう。成功例はまだ見たことないけど。ベトさんがまた妙な装置に向き直ったことによりさっさと足を進める。門を出れば仕事への切り替えが必要だ。頑張っていこう。
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