自分で作ったアンティーク風のものをあつかうこの店を贔屓にしてくれる客の中に異人がいる。見た目普通の叔父様なのに、稀に見える腕が人のものではない色と形をしているのだ。はじめ見たのは商品を渡すときにちらっと見えてしまった。まぁ、異界と混じった国が海外にあるし、この平和な日本だ。どんなのがいたって騒ぐほどじゃないと、叔父様にしか聞こえないような声で「袖が捲れていますよ」と注意を促しておいた。もちろん袖は捲れていないが、人ではない叔父様は察したようでへにゃりと笑い「どうも」と声を落とした。違う場面だが腕が見えることが2回目3回目、と何回か続いてオマケで商品にはしない腕輪を渡した。ちょうど服と手袋の間を埋めるにはよいものだ。受け取った叔父様はそれをはめて
「神様の所有物にならないかい」
と言った。問うたわけではない。言ったのだ。叔父様の目はいつもの黒い瞳ではなくて、灰色をしていたのが私が最後、日本でみた景色だ。
そして、いまじゃ、HLだ。わけもわからず住処も仕事もないままうろうろするしかない私を何故だか異界の方達は随分推薦して下さる。物をもらったり、教えてもらったり、まるで昔からの知り合いかのようにハグされたり、話しかけられたり、譲られたり、本当、よくしてくれる。これが「神様の所有物」かとも思ってみたが、だからなぜ異界の方達に好かれるのかはわからない。しかし生活がそれでしか成り立たないため受け入れ態勢はなんでもこい、状態だ。
「かわいいだろ」
「ええ、とても」
例えば異界と人間のミックスな赤ちゃんを見せられようとも。ふにゃふにゃの赤ちゃんは母親似の人間に近い見た目をしているが、父親に似て目が3つある。でも、可愛らしい。
「それでだ、名前をつけてほしい」
「私が?」
「彼女に話してたんだ。神様の使い、君だよ?君がいるから、加護が宿るような、そんな、優しい名前を君ににつけてほしいって、彼女も喜んで了承してくるた。だめかい?」
父親は照れたようにそう呟き、赤子を抱く人間の母親は私をみてにこりと笑う。
「いや、アナタがいいならいいけれど」
ふにゃふにゃの赤ん坊、その子の未来ある名を求める親たち。なんて幸せで普通の自然な世界だろう。この子に明るい未来が、否、この子と両親に優しく明るい未来が宿るように、名を。
「…レオナルド、なんてどうかしら。」
今、あそこで異界の変な騒動に巻き込まれる形で走り回っている人間の、しかしオメメは神様の少年の名を口に出して私はゆっくり笑みをつくってみせた。
たぶん、おそらく、きっと、幸せになれますように、と神様の所有物の私は願いながら。
戻る
TOP