少年はにやりと笑う、賭博に勝ったからだ。相手にされた脂がのった男は苦い顔をし、回らない舌をしまい込んだ唇を震わせて鼻筋をひくつかせた。初めは少年の事を馬鹿にしていた男達は目を丸くし、脂ののった男に金目当てですり寄っていた女はスルリと少年の横に来てしまった、遠目で眺めていた人達は少年をはやしたてる。ふんっと笑ってから隣に立った女の腰をなであげて口にコインを一枚わたした、周りの女達から小さな歓声が上がって脂ののった男よりも断然イケメンの少年はハーレム状態になっていく。
「ありがと、知らないおじさん。俺、初めての賭博だったけどすっごい楽しめたよ。お金も沢山くれたしね」
手元にある賭博で奪い取った金を袋に入れて数枚を身体をさわらしてくれた女達に渡しておく、またきゃあっと悲鳴が上がった。
「素人だと?嘘をつくんじゃないぜ、あんなに手慣れてたじゃないか!」
「実戦は素人だよ、家ではやってたけどね〜」
んっん〜と鼻歌をやりながら笑っていると後ろからゴツイが美しい手が少年の顎をなで上げる、少年は肩を跳ねさせ直ぐに女から手を離して顎に沿わされた手をひっつかんだ、まだ指はゆるゆと動いている。
「AAA、なにをしているんだい」
「ひっ、や〜その〜…」
「んん?ああ、賭博か。別に賭博は好きにすればいいが……今はなんの時間だい?」
「勉強の…時間です…リンゴォさん……」
「そうだろう?過ぎてしまった時間を戻せないからもっと勉強をしなくちゃあならないなぁ…」
少年は金の入った袋をひっつかんだまま立ち上がり女達に別れを告げて、台を貸してもらった礼として何枚かの金をマスターにほおりなげた。リンゴォに合わせて店を出ると少年に降り注ぐ太陽光、光を遮るようにきゅうっと閉じられた目にリンゴォがもっと光を遮るために手を這わした。
「ね、ねぇ…その…今回はちょぉっとだけ大目に見てくださいよォ…」
「報告はする、それは絶対だからな。あまり無茶はしないでくれ」
「…それは、解ってます。一緒にいれなくなるのは嫌だし、だから」
解ってますと苦い顔をした少年にリンゴォは小さく照れたように表情を崩した。リンゴォはこの少年に気に入られている、少年は大統領の妻であるスカーレット夫人の姉妹の息子である。少年の母親は死んでしまっているから彼らに引き取られ教育や実戦ができる者達に預けられては色々なことを学んでいる最中だ。その中でリンゴォとの勉強は一番続いているし、リンゴォの考える「男の世界」を少年自身が認めて受け入れているからってのもある。
「リンゴォさん…その……」
「報告するのは賭博して勝ったことだけだ…その…AAAがこれから勉強をして、先程の時間を取り戻すならばの話だがな」
少年はこくこくと頷いてくしゃりと笑い、手に入れた金のつまった袋をリンゴォにわたす、自分の分として何枚かは持っているようだが殆どがリンゴォの手元に来てしまった。いらないと視線で訴えると少年は仕方なさげな顔をしている。
「じゃあ、半分はもらって下さい。使わないし」
「…わかった」
渋々受け取った金は重くリンゴォの手にのしかかる。
「…随分、馴れてきたな」
「でしょ?」
「まだまだ勉強は必要だがな…」
リンゴォはいつの間にか時間を戻していた、少年は力を使う前に戻されたのをはっと気づいて眉を下げる。
「すぐに解るだろう」
自分の力の最適な使い方と美学を混ぜ合わせた考えが、そう続けるはずだったリンゴォの口は先程からふく風により乾き、太陽光により焼けちりりと痛む。一息あけて言い直すと少年は強い目でコクリと頷いてみせた。
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