「これとか似合いそうね。どう?桜ちゃん」
桜は光の少ない瞳で自身の義理の叔母?にあたる人を見た。
花柄の白いワンピースかフリルの白いワンピースを壁にかけ、机には色違いのカーディガンが5枚ほど広げられ、リボンのついた赤と黒の靴が並べられ、うんうんと悩む姿は久しぶりにあったのにお気楽で何だかその場には似合わず桜の瞬きは増すばかりである。
「えっと…」
「あ、どっちも微妙?花柄はちょっと幼すぎたかしら」
そうよね、桜ちゃんも成長したのよね。と呟いて彼女はトランクからまたワンピースを取り出した。よほどワンピースを着てほしいらしい。
桜の生きている親族の中で唯一魔法を知らず正気を持つというか、保っているのがAAAである。間桐家の内にいて魔法を知らないのは異常であると思われるかもしれないが、彼女は幼い頃から魔法ではなく文学や外国語に長けていたらしくそちら方面に走り海外に飛んでいたらしい。よく祖父が許したなと思うが、なにやら大人の事情も鶴野の手助けも混ざっていたらしいためそのとき幼かった桜はなにも知らないのだ。その桜も小さい頃あったのは二、三回で、彼女の記憶も曖昧だ。
気が滅入ってしまった鶴野のために全て放り出して海外から帰ってくるほど、兄のことはしたっている。あれからずっと、死なずに腕を失い、気が滅入ってしまった鶴野のために冬木にいて尽す彼女を桜には狂人まがいにしか見えないでいた。
「桜ちゃんはかわいいからなんでも似合うわね。羨ましい。」
「そんな、とんでもない…」
「だって、私なんていつの間にかおばさんよ?婚期逃しちゃったし…はぁ」
「この前言い寄ってきてた男性、いらっしゃったじゃないですか」
「だぁめよ、あんな奴。鶴野兄さんをほって2人で過ごそうとか言うのよ?私には無理よ」
唯一の兄さん。もう一人は死んでしまったから、だから、唯一の鶴野兄さん。
そう、声は続くのだろうと桜は容易く予想できた。予想できて、彼女の狂人まがいに拍車がかかった気がする。死の原因も、気が滅入る原因も、桜がこうなってしまっている原因もろくに知らないまま全てを受け入れ、頑張ってつくしているのだろう。憐れにも見える。
AAAは気にした様子は無く、可愛らしいワンピースを全て桜に預けてにっと笑う。笑い方はどことなく雁夜に似ている。
「お土産だし全部あげちゃうわ」
この人の全てを捧げられている鶴野が羨ましく思えてきて、桜は「ありがとうございます」と弱々くし返事をした。


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