「吉良さん、俺の爪集めて楽しい?」
「嗚呼、AAA用の瓶が10もできたから楽しいよ。まだ集め足りないなぁ」
「…10個もできたの?早いね」

ぱちんと最後の爪が切られてすぐに爪用のヤスリがかけられていく、俺の爪が女の人みたいにつるりとしたものになっていく、くすぐったいと眉をしかめれば我慢してねと奴は笑った。

「最後にマニキュアをぬれば大丈夫だよ」
「…うーん…別にいらないけどなぁ」
「俺の知ってる君は、灰色のマニキュアにオレンジのグロスが塗られた唇にアイメイクじゃないか」
「別に…今日休日だし、明後日の仕事の時にしてくれよ」

一応モデルの仕事をしてる俺にとっては自分を着飾るメイク達は必然的に必要である、しかし、せっかくの休みなのに肌に負担をかける気にはなれないし、この人の家にいるならば外に行く事もない。のにこの人は完璧な俺を見たいらしい。すっぴんも好きらしいけど、吉良さんははっきりしたいタイプだから昼前には完璧なメイクがされてしまう。
まぁ、きれいにメイクしてくれるから嫌いじゃないけど。

「はい、マニキュアが乾いたらメイクしような」
「…うん」
「その前にキスを…」

ふれるだけのキス、段々とゆっくり味わうようになる、変な気分になるのはいつもだけど今日は久しぶりのマニキュアの匂いも混ざって余計にクラクラした。甘くない、この人と過ごすのは全くもって甘くないし優しくない、突き放されるときの方が多いのにまれに甘やかすから怖い、絡め捕られて最後はポイとされるのに…この人と一緒に生きるのは無理だってわかっていながら一緒にいるんだ。
ちゅうっと音をたててはなれた。

「ふ…はぁ…」
「ん、さっきはオレンジ関係の物でも食べたのかい?」
「……ん、柑橘系のケーキを食べたよ」
「…誰と?」
「ファンの子達と一緒に食べたよ、おすすめらしくてね、奢りだった。なんだっけな…甘い夢に誘われながら…えーっと……シェフ絶賛の…」

視界が反転した、見えるのは彼の部屋の天井だけで、彼の強い力で押さえつけられたから起き上がれはしない。あーあ、なんか面倒臭いスイッチおしちゃったみたいだなぁ、この人は本当によくわからない人で、優しくない。

「…もっと、ドロドロに甘やかした方がいいか」
「甘いことなんてなかったじゃないですか」
「うるさい」

勢いよく綺麗な手が伸びてきた、化粧もなにもかもまた今度ってわけだろ。この人は本当に甘くないしやさしくない、痛い。


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