音をたてて置かれた白い高級ティーセットに鮮やかな色のフルーツののったパンケーキ、かわいらしいデコレーションケーキの甘い香りが鼻をくすぐった。白い壁に高そうな家具にふっかふかのソファー、に座る場違いな私と知らない男。

「ブラックモアと言います…」
「あ…AAAです」

私はしがない猟師夫婦の間に生まれた小娘だ、こんな豪華でかわいらしいものなど半ば無縁の生活をしてきて早20年がたったある日、猟師にならなかったためか合う職がなくふらふらしていたところに一本の電話。スナイパーまがいをやってほしいとのことだった、初めはどんな動物をスナイパーみたいにして撃てばいいのだろうとばかり考えていたが、話を掘り下げていくうちにそれが犯罪……まぁ言うと人の頭をぶち抜くことだとわかった。父はやったことがあるので不快だと経験がある私に押しつけてきた、母の心配そうな顔は忘れられないだろう、しかし呆けていた(というよりも何故私や父が豚箱に入っていないのかが謎であった、ひどい娘だ。自分でも思う)私は了承した。………のだが、随分と身分の高い金持ちに雇われた。たしかここって、その、最近有名な大統領様のお仕事関係部屋じゃね?あれ、私しぬんじゃね?こんな服着てきたの場違いじゃね?

「…さっそく仕事の話なのですがぁ」
「は、い」
「指名した人に怪我をもしくは殺しをしてほしいのです。もちろんお金は出しますし警察にも捕まらないでしょう、電話で一応指示は出しますが近くに寄れば直接会って話もします…えーっと、あぁ、お金はその時その時らしいですよ」
「…」
「…スイませェん、なにかご不満が?」
「あー…いえ、別に…あなたが相棒みたいなものってことですかね?」
「ですかねぇ」

男は小さく笑った、彼の目がとろりと溶けるようなそんな笑い方だった。
別に不満は無い、しかし言うならば、これはこの男の後ろ…いや、上に大統領様ぐらいの地位の者が居てその人間から頼まれていることだと推定する…、ならば私もその人間に頼まれているも同然なのだろう。これは失敗できそうにない。手元にある熱をもった猟銃をぼやりとながめてからケーキにずぷりとフォークを突き刺した。

「そういえば、この壁の汚れははじめの仕事代から引かしてもらいますから」
「…どうぞ」

パンケーキにかけられた赤いベリーソースをぶちまけたような酷い有り様の壁と横たわる侵入者、男は「せっかく侵入者を掃除してくれたのに、スイませェん…」と言葉をこぼしながら代金をサラサラと紙に書きポケットに突っ込んでしまった。


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