「なんだきてたのか」

深夜の音すらしない静かな暗闇、廊下に立つ家の部外者に直毘人はげぇと顔を歪めながら声を出す。
よく見知った顔は整ってはいるが妙に青白く、ギラつく瞳は獣のよう。直毘人に気づいたAAAの瞳はすぐに凪ぎ、ゆるく笑ってみせる。そんな風に外面だけはいいのだからたまったものじゃないな、と思いながらも直毘人は近づく足を止めずに人一人分をあけて正面に立ってやる。瞳の奥の色も、頬の引きつりも、耳の変形もしっかり視界に入れながら全て呪物や呪具が入っている君悪さに気持ち悪いものを見る目でAAAを見てしまうのは仕方がない。だって気持ちが悪いんだから。

「こんばんは直毘人さん、お邪魔しています。」
「まぁた直哉か」

直毘人が我が子の名を呆れこぼせば、彼は少し嬉しそうにほほ笑む。

「僕が無理言って夕ご飯もいただいたんです。朝には帰らなきゃならなくて」
「こんな夜更けに徘徊か?」
「まさか!お手洗いに行っていただけですよ」
「で?」
「はい?」
「2ヶ月、いや、1ヶ月半直哉をほっておいてなにやらかしてたんだ?」

AAAはほほ笑んだだけで口を閉した。否定ではなく、肯定である。
この男、呪具か呪物の埋め込みをなれたからと半月もしないうちに済まして、のこり1ヶ月半をうざったらしい周りの片付けに費やしたらしい。家を解体する手立てを終わらせたらしく、彼が言えば彼の家の人間全て路頭に迷わせるなんてことができるところまで済ませているらしいとも、彼につけている直毘人の個人的な監視役から聞いている。その監視役についてもAAAは見て見ぬふりをしていることも、直毘人は知っている。しかし、裏を返せば「家を解体する作業しかわからなかった」ともいえる。他にもなにやらやっていたらしいが、内容までは監視役もまかれてしまって情報が入ってきていない。碌なことじゃないのは確かだろう。それに、歳を重ねるごとに身体は丈夫になり精神も無駄に丈夫になり、自身の家の改造なんて屁でもなくなっている彼が自らにされる埋め込み作業を2ヶ月も必要としていないのを直毘人は知っている。知らないのは彼に近づきすぎてしまった直哉か、彼の本質を知らない有象無象だろう。直毘人の脳内に自身と同じく知っている立場にいる真希と真依が思い描かれ、ため息をこぼした。

「まぁいい、オマエの家がどうなっても禪院家には関係ない。」
「えぇ」
「だがな、うちの次期当主筆頭を婿に出してやる気は更々ないぞ?若造」

変わらずAAAは笑う。少し頬を引きつらせたが、あまりにも変わらない笑みにやっぱり直毘人は気持ち悪さがまさる。
呪術師から見れば、彼は体内に入れすぎた呪具呪物故に比率が祓うべき呪霊に傾いているため彼の本質を知らずとも嫌悪感を抱くできあがりになっている。天災か人災か、はたまた災害そのものなのか、しかし見た目は人間で触れたところも人間だ。害はないはずなのにじわりと滲み出るような嫌な感じ。それを隠しとおせるぶ厚い面の皮。ああなんて厄介。その厄介とズブズブの関係になっている直毘人の息子。あぁ、ああなんて、なんて厄介な災害。極め付けにその災害は自分と直哉、自分の家、その他という三つの区分で判断するトンデモ考え野郎なのでそこから家が解体されたら残った二つが彼の世界になるのだ。もう、直毘人はたまったものじゃない。息子がやな奴と並んでいる世界が近づいている。

「でも、それって直毘人さんのご意見ですよね?」

だからなんだ?と声色にのせながらAAAはさらさら言葉を紡いでいく。

「直哉くんがいいって言ったら、別に、いいですよね?婿でも嫁でも、僕が愛するんですからいいですよね。」

厄介。
厄介でしかない。
こんな男に成長するのを知っていたならば幼少の頃に直哉に合わせることも禪院家の敷地を跨がせることもさせなかったというのに。どこから厄介で災害みたいな、そんな男になったというのか。元からか?首を捻って顎を撫でながら苦い顔を晒す直毘人にもAAAは笑みを崩さない。自分より確かに格上相手になんて余裕の笑みだろう。いや、彼は本気で余裕なのだ。だって、なんたって、直哉はAAAとズブズブだ。なんでこんな男が直哉はいいのだろうか、顔か?性格か?それとも長年付き合ってきた縁なのか?2人が笑っている未来がちらついて仕方がない。ひっくるめて直毘人には彼らの関係がわかったためしがない。たぶん真希も真依もわからない。

「では、直哉くん待たせてるので部屋に帰りますね。おやすみなさい直毘人さん」

余裕綽々の笑みのままさっさと立ち去ろうとする。家がどうこうといった顔馴染みであるばばについての話を聞き出してやりたかった直毘人が呆れたようにはは、と小さく笑い声をこぼした。

「甚爾のことはどうする」
「それごと愛してみせますよ」

ああ、本当になんて厄介なとろけた目をする奴だ。























AAAさん:直哉のことが大好きな厄介な男。直哉とAAAの2人の世界と他とにしてしまう準備がほとんどできてるやばい奴。一声かけたら直哉を囲えちゃう。家にも世間にも未練が無い。体質故に頑丈。直哉くんは直哉くんらしく生きてほしいので憧れの対象には嫉妬しない。

直哉くん:AAAが自分だけに甘くなればなるほど嬉しくてもっとハマれ!と思っている。が、自分の周りに囲いができていることに気がついていない。近づきすぎて周りがみえなくなってしまった。

真希真依:AAAのことは無駄な蔑みなどしてこないから嫌いじゃないけど、色々と厄介だし趣味が悪いなぁと思っている。

直毘人さん:息子が狙われてて気が気じゃないパパ。静観しつつ、たまにAAAにちょっかいかけてなんとかならないかと頭を悩ましている。なんともならない。

ばば:AAAの家の当主もどきの老婆。家のため私利私欲のために幼少のAAAを使っていたはずが、いつの間にかボロ雑巾の如く捨てられる立場に変わっていた。


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