捏造過多
五条から悠仁に力をつける助っ人を用意しました〜!と伊地知に連絡が入った。朝5時だ。急すぎる。集合場所はなんだか見たことある気がしながらも伊地知は地図を確認した。時間は10時らしい。急だ。慌てて虎杖と今虎杖の担当になっている七海にメールで連絡し、スケジュールの調整をした。
そして、2人を拾って集合場所まで車をまわし、やっぱり見たことある場合でやっぱりよく利用する店が近い場所だったため伊地知は納得したようにひとつ自分に対して頷く。見知った顔がどこからくるか、とぐるりと視線をさまよわせて背後から馴染みの気配がきているのがわかった。わかりやすく気配を消さずに、ありありと表しながらきてくれたのでしっかりと足を踏ん張る。
「きっよったっかっく〜ん!はいどーん!」
「グッ」
伊地知の予想通り、名前を軽やかに呼び背に後ろから飛びついてきた。そんな女をみて虎杖はぎょっとする。つぶれたような声を出した伊地知は首に回る細腕を軽く撫でて苦しさを訴えるが、女…AAAはにまりと笑ってみせるだけで離す気はないらしい。やはりよく見知った顔だった。
「やほやっほ〜潔高く〜ん!2ヶ月?ぶり?ぐらいだもんね?おひさ〜」
「久しぶり、AAAちゃん。苦しい」
「はわ〜!久しぶりの潔高くんからのAAAちゃん呼び!体にしみわたってキクね〜!!疲労回復にばちばちにきいちゃう!ってカンジ!どお?一家に一台潔高くんマシーンなんて〜あっ苦しいのは愛故だから見逃せ〜?」
「それは……どうなんです?」
「私は欲しいね!いくらしたって金積むよ〜。他はさてね〜?ってかーんじ!私も私の口から出た言葉に責任とってないし〜」
「でしょうね」
「言うね〜潔高く〜ん」
「最近怪我は?任務手こずったりとか…」
「してないしてない!私ったら天才だから、もーちょーカンペキのマシマシなの!潔高くんの代わりの補助監督さんも、まーまーやり手だったし、オールオッケー!!てか、潔高くんは痩せたね?さてはごはん食べてないな!」
「よかったです。えっと、ごはんについては、そんなことは、ないはずなんですが…」
「今日ヒマ?ヒマだね!夕飯食いに行こ〜」
「私の食育月刊はお断りします」
「ざーんねーん!もう開催されました〜!パフパフ〜!!今日の予約しちゃったし〜肉も魚もバランスよく食べさせてやんよ〜。てか〜わかってるなら話はえーね、外食できない日はデリバリ頼んで持ってっちゃるから逃げ道はないです!おら!観念しろ!」
「あぁぁっ店舗予約が早い」
予約された画面をみせられ伊地知はあわててその店舗を検索し、値段をみて悲鳴を上げた。お二人様の一番最低プランでも10は軽く超えていてたぶんおそらく支払いはAAAなので割り勘をしようかと声をだしかけて、AAAはそれを言わせないまま笑って腕をほどく。こちらのわがままに付き合ってくれるんだからいらないよ、といつも食事のたびに奢られるたびに言われているため伊地知は居心地わるそうに口をもごっと動かすだけにとどまるしかない。
一連の伊地知の姿に笑っているAAAは、置いてけぼりを食らっていた虎杖と七海に向きなおる。口を開けば頭の悪い発言ばかりするこの女が腐れ縁に近い後輩な七海は一気に顔を歪めた。
「ナナミパイセン!今日もバッチバチに筋肉が決まってる感じっすねおはよ〜ざいます!」
「おはよう御座います、AAAさん。相変わらず騒がしいですね。」
「ど直球じゃん?距離つめちゃろ!」
「離れなさい」
「うはははははは」
どーんと体をぶつけるように近づいてきたAAAに七海はため息をこぼす。伊地知と並ぶとヒールと身長で体格差程度しか変わらないのに、七海とならぶと小ささが際立ってしまい無意識のうちに七海は一歩ひく。そんな、ため息も呆れ顔もまったく気にせず岩みたいですね!と元気よく言われて、七海は少し遠い目をした。呪術師としてはできた後輩だけれども性格というかなんというか、頭がよろしくないのはどうにかならないものか…と。五条しかりAAAしかり…。
「ウツワくんじゃん」
驚いたように「ウツワくん…」と言われたことを繰り返した虎杖は勢いに圧倒されてぼんやりしながらAAAをみて、普通に元気なお姉さんだなぁと場違いなことを考える。七海が引いているのも伊地知が慌てることをやめて少し笑ってこちらを眺めているのも虎杖の視界には入るのだが、それに対して反応することもできない。にまっと笑って「ごっじょーパイセンの秘蔵っ子っしょ?」と言ってみせるのもとくに反応できないまま、軽く七海に肩をたたかれた。
「ほら、虎杖くんが圧倒されてますからテンションを下げなさい。」
「えー?はーい?」
「どこまできいてますか?」
「器が死んだ〜みたいな話はまわってきてて、きいてるけど。でも?私?関係なくない??って流してたから知らね!あ、でもぉウツワくんが生きてるのはなんか禁句?禁忌?らしいから周りに話すの禁止!ってごっじょーパイセンは言ってたなぁ?パイセンとあんま話せなかったけど」
「誰かに言いましたか?」
「まっさかー!てか!!!!ごっじょーパイセンから頼まれたの今朝なんで!!!!!!!朝起きたら部屋にいたんすよ〜あの人!で、そのままここに来ました〜!」
自分の家のある方向を指差して声を張り上げるAAAに不法侵入ですよそれと七海から小さくツッコミが入ったが、AAAは特になにも言わなかった。この場にいない人がやったことにとやかく言ったって仕方がない。
「じゃあ、予想通り助っ人はAAAちゃんですね。よろしくお願いします。」
「え?お?おぉ?ごっじょーパイセンなーんも言ってないの?…いや〜相変わらずごっじょーパイセン最強ワンマンぼっちキマってんね?」
「そんなこと言えるのあなたぐらいですよ」
「うはっ!ナナミパイセン眉間の皺やっべ!私ちゃんと一緒にいるのストレスフルマッハっしょ〜」
「わかっているなら離れなさい」
「はーい!」
「自己紹介します?」
「どぉなんだろ?私のことしってる?ウツワくん」
虎杖の否定にAAAが「わはっ」と口から笑い声をこぼす。
「ごっじょーパイセンまーじでなーーんもいってないじゃーん?しゃーないね!今朝うちに来た時点で決めたのか?わからん!まー、いーや。私、AAA!AAAちゃーん!とかさーん!とか気軽に呼んでね〜!術式なしの二級呪術師だよ!」
「えっ」
「おっ!新鮮な反応だね!いや〜マジで、ないんだな〜。残念残念、残念すきでおうちのえらぁい人が首くくりかけたぐらいなんだよね〜!」
反応に困る。
上下黒のパンツスーツを着たAAAは言っちゃ悪いがパッと見、補助監督にしかみえない。筋肉や傷などがみえるところにあれば違ったかもしれないが彼女の身体はしっかりとスーツにつつまれていて見ることはできないし、言動もあいまって五条に似た軽率さも感じてしまう。
「まぁ、なんつーか?呪力込めて殴ったり呪具使ったりしてんだわ?たぶん、ウツワくんと似たようなかんじなんかな?君の戦い方とか知らないんだけど〜!ま!君の力になるためにごっじょーパイセンに呼び出し食らったワケ!」
「ありがとうございます……?」
「んははは、よいよ!よいよ!礼なんてどーでも!強々ごっじょーパイセンの頼みだしね〜。それに、私のお目当ては潔高くんだもんね〜!」
「ぐえっ」
「おっとごめんあそばせ!」
「当たってます当たってます」
「この年でまだ育ったんだわ、感じろ!」
「無茶言わな当てないで!当てないで!!!」
「あっなんか果物もらったから後でお裾分けすんね〜」
「それはいただきま離れて離れて」
「よいではないか〜よいではないか〜」
「……相変わらず仲がいいですね」
「あれ、仲いいの?」
「まぁ、在学中もあんな感じでしたから、たぶん仲良しです。2人で買い物行ったりドライブしたりもよく聞きますし、あんなちゃらんぽらんですけど伊地知くんがストレス無しでいる人ですよ。」
「へー?付き合ってる?」
「…いいえ。残念ながら彼らはそういったのではないらしいので」
「ナナミン残念なん?」
「…」
出戻ってきた七海の目に、学生時代と変わらないはしゃぎっぷりと仲睦まじさで現れた2人。伊地知とは五条を通し先に会っていたが、AAAが合わさった伊地知はいつもの伊地知とは違うようで、あの時のまま、とは言わないがそれに似たなにかも宿す2人に再度出会い七海は涙が出そうになったほどだ。
高専時代、灰原を亡くし色々と荒んでいたがしっかり卒業だけはしようと、目的もなく高専に通っていたときにできた後輩2人。片方はオドオドして、もう片方は頭も行動もぱっぱらぱーだった。男と女。両方術式無し。荒んでいたからそこまで仲良くしてあげられたわけでも、指導してあげられたわけでもないはずなのに2人は「先輩」「パイセン」とひょこひょこついてきていた記憶もある。しかし、それでも、そこに五条と夏油や七海と灰原のような面影を感じてしまい、片方を無くすのだろうと、勝手に思いながら呪術師という界隈から足を洗った。
界隈に戻ってきて、まだAAAに再会していない頃、伊地知に彼女の話をふったことはなかった。内心、伊地知が五条の側にいるから彼女は死んだのだと、彼女は呪術師をやめたのだと思っていたからだ。周りも特に話題にあげなかったし、自分についたような似た傷を抉る趣味は七海は無かったので、AAAに再会するまで世間話だとしても伊地知に彼女の話をしたことがないほどに、気をつかっていた。
のに、彼女は生きていた。
失われなかったのだ。伊地知とはしゃいで懐かしむように「パイセン」と呼ぶ、よく笑いよく話す頭がぱっぱらぱーなやっかいな女は、理不尽な運命には失われなかった。無意識に、どれだけ七海の救いになっただろう。
「えっパイセン?!ナナーミケントゥパイセンなの?!は?!?!うっっっわ筋肉の塊にナナミパイセンはなったの?こっわ?!えっあの美人が成長したらこーなるん?!もはやポケットなモンスターじゃない??詐欺では????あっ!!!これ、ナナミパイセンに高専ときに借りてた小説なんですけど〜!なくしたと思ってたらぁ…あっいえ!なんでも〜!!なんでもありませーん!はーい、お返ししますね〜、いや〜四六時中もっててよかった!」
再会の開口一番がこの馬鹿みたいな言葉だったとしても、七海は高専時代にやったように彼女の頭を軽く叩きながら、救われた。片方がいなくなる呪いみたいな連鎖は伊地知の代で断ち切られたのだ。
出戻って、伊地知と再会し、AAAと再会し、先輩と後輩もしくは呪術師と補助監督もしくは呪術師と呪術師として過ごす時間が増えて、成人済みの未婚男女の距離ではないな、と肌で感じた。今だってきゃいきゃい絡んでいるのは友人の距離とは思いにくい。五条や家入に言わせれば「なれ」であるらしく、元からあんなんだろとのことだが、一度見なくなったものを改めて見せられた七海には刺激物だ。ひっそり付き合ったりしないのですかと両者に別で聞いたが両者とも無いと言われてしまったから、なにかの弾みがなければそういった関係にはならないだろうこともわかっている。夜蛾からは身を固めたらどうだと声がかかっているらしいが、2人ともが不思議そうな顔をして「誰とですか?」というのだから末期だ。さすがに七海も天を仰いだ。
が。
が!!!!!!
わかっているのと、かわいいかわいい後輩が2人セットで幸せになったらいいなという精神を持ってしまうことは両立できてしまうのだ。なんならセットで幸せの方が比率がでかい七海は、ポロポロ本音がでてしまう。家入にも最近もらしてしまいがちだ。
また言ってしまった、と七海は自身の眉間をもみながら「聞かなかったことに」と虎杖に釘をさしておく。虎杖もよくわからないままだが、なにかあるのだろうと察して頷いた。
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「あ」
「どうかしました?」
「んや〜?無くしたと思ってた本がでてきた」
「よかったじゃないですか、っと。この服は着ます?」
「着る〜適当に箱に入れといて。」
「改めて見ると、着る服めちゃくちゃ少ないけど…」
「ん?んぁ?ほんとだ?えー?じゃあ、また買うよ。季節ものとか流行り物があるから結局買うし、ま、なんとかなるっしょ?」
「楽観的だなぁ」
「スーツとか変えの効きにくいのはおいてあるっしょ!ゆるされたい!」
「スーツもすぐ戦ってダメにしてるのは?」
「現実……」
まだ部屋にも到達していない廊下であるのに、わちゃわちゃと騒がしい会話を耳が拾い夜蛾はため息をこぼす。
教え子2人、他学年と比べ手はそこまでかからなかったが騒がしいのと大人しいのと妙に気があったらしく、彼らだけの同級生は仲良く引越し準備中だ。補助監督になるために入学した騒がしい方は考えが変わり呪術師になるらしく、呪術師になるために入学した大人しい方は自らの力不足に当たり補助監督になるらしい。面談も相談も彼らと沢山したためにこれから進む道が決定しているのは知っているものの、モヤついてしまう内心が無いわけではない。2人とも道や職種は違えど志を持って目指してきて、それを2人ともやめて新しい道を選んだ。生まれも育ちも生き方も別の同級生という存在が別の道に進むきっかけになったのは事実だ。
部屋からダンボール箱を持ち出している伊地知が夜蛾をとらえ、あわてて頭を下げる。その勢いでダンボール箱が落ちかけバランスを崩すのを、扉内からのびてきたAAAの手がぐっと押さえ込むのを夜蛾はしっかりとらえて、手は出さなかった。1箱取り逃がしたが中は衣服だったらしく軽い音を立てて伊地知の足元に転がるだけでおさまる。
「あっぶねー!あははは潔高くんだいじょぶ?」
「は、はぃ…あっ荷物がっ」
「いいよいいよ〜?服っしょ?割れないしべっつに〜?あ?開いちゃった?」
「そこまでは」
「んそ?じゃ!ちゃちゃっとつづきやっちゃいましょ〜」
「順調か」
「あら、ほったらかしにしちゃってたわ夜蛾センセ〜。おつかれさまでーす!まぁまぁですね?」
「お、お疲れ様です夜蛾先生。ベッド退けたらほとんど終わります。」
彼らも、もう数ヶ月しないうちに高専を去る。もちろん呪術師で補助監督であるため完璧に去ることはないにしろ、学生としては卒業だ。補助監督の業務をこれから更にみっちり叩き込まれる伊地知はまだ寮から出ていかないが、高専に属しながらも寮は完全脱却するらしいAAAは1人住みを予定された格安のマンションに引越す。セキュリティ面に問題があるらしいので家入と伊地知にやんやと言われつつ、聞き流して決定したそこは五条でさえもどうなんだと渋い面を晒すようなものらしい。夜蛾もチェックしたら流石に却下するだろう物件なのだが、知らないので話題には上がらなかった。
引越し荷物の片付けは、廊下に積まれたダンボール箱の数からして先程のように騒ぎながらもしっかりと進んでいるらしい。夜蛾はガサリとわざとらしく手に持っていた袋をゆらしてやる。高専から一番近いコンビニエンスストアのものだ。
「そうか、じゃあ今食べれそうだな。アイス、溶けないうちに食べろよ。」
「うっは〜!まじ!まじだ!ちょー食べたかったー!!!!もうなんかあっつくて〜!!きゃーっありがと夜蛾センセ〜!!カップじゃん?!2種類ある〜!潔高くんどっち食べる?!」
「えっありがとうございます、夜蛾先生!AAAちゃんどっち食べます?」
「えーじゃあ半分食べて交換しない?」
「いいですよ。こっち気になる」
「わかる〜!なんか味の想像つかないよね、甘そうってのはわかんだよ。夜蛾センセまじセンスとんがってんね?」
「褒めてないな?」
「褒めてる褒めてる褒めてる」
「はい、スプーンどうぞ」
「あんがと」
「ほてったからだに染みる…」
「うま〜」
きゃあきゃあわちゃわちゃ、呪術師界隈では見られることの少ない騒ぎ方に夜蛾はどこかぼんやりと眺めてしまう。ふたつのアイスを「あーん」しあったり交換しながら食べる姿は幼い子供のように見えて、どこか男女の仲のようにも見える。このアンバランスななにかが歴代見てきた生徒たちも持っていたものなのに、この2人はなぜか別だと夜蛾は感じてしまう。それこそ夏油のようにはならず、灰原のようにもならず、五条のようにもならなければ、七海のようにもならず、そして家入のようにもならない。近年見てきた生徒たちのようで、そうではないなにかがたっぷり詰まった2人はどろりと夜蛾の思考を鈍らせる。
「あ、そーそー夜蛾センセ、ナナミパイセンの連絡先ってわかります?」
「……………なぜ?」
「ん?うはっ顔こわっ?!えっと〜、じゃじゃーん!これ、ナナミパイセンに借りてた本がさっき!出てきました〜!!!」
「………さっき言ってた無くした本って」
「そ!パイセンから借りパクしちゃってたんだよね〜!いや〜なーんにも言われんまんま卒業しちゃったし?仕方なくない?えへっ私いまの今までわすれちゃっとった!んで、ね、パイセン今一般人になってるしでどしよっかな〜って!夜蛾センセなら連絡先知ってるかな〜?って!潔高くん知らないじゃん?」
「まぁ、知りませんけど」
「だしょ??ど?センセ知ってる?」
「……………緊急連絡先は控えてあるが、今それが繋がるかは確認していない。七海は一般人になって、界隈から足を洗った。それが線だ。」
AAAは夜蛾に見せていた少し色褪せた文庫本を一旦膝に置き、静かに、確実に、七海と繋がることはできないと、界隈とは別世界なんだと言われるような響きにくっと目を細める。
「あ、そ?ならいーや。四六時中持ってることにするし」
「は?」
「え〜?なにその顔〜!2人ともうけるね。てか、そりゃそうっしょ!もし、任務先ナナミパイセンが働いてる会社だったら?あってかえせちゃうよね!もし、なんでもない日に街でみかけたら?かえせちゃうよね!もし、まぁ?これはあり得なさそーなんだけど、も?呪詛師になって敵としてかちあったら?そんとき渡せちゃうじゃん!ねー!良い案でしょ?」
「そんな数打ちゃ当たるみたいな」
「え〜?よくない?それとも潔高くんなんか案ある??」
「五条先輩に……いや、やっぱり関わらない方が無難かな」
「ふーん。なんで?とは言わないけど、わかっちゃうから言わないけども、別に死んだわけじゃないんだから腫れ物にさわる〜みたいな?扱いはしないでよくない?ま、私のデリカシーとかいうのがやばいからかもしれないけど?」
「自覚あるなら治すんだな」
「うっはっはっ私が??無理じゃね??できたためしないもん?わかってるのに言うんだセンセ!知ってるっしょ?家でそれができなくてほっぽり出されたんだからさ〜!」
「AAAちゃん」
止めるように投げられた伊地知の声に、ヒートアップしていたAAAの、轟々と燃える炎が見えそうなほどヒートアップしていた目の輝きがかき消える。
どちらかが止めどちらかが走るこの2人はお似合いなのに、違う道しか進まない。その違う道が五条や夏油と違い反対ではなく並行の違う道であるが故に2人して持っている価値観がぶつかり合っている。なんてお似合い。なんて素敵な隣人。だというのにこの2人は変わらない。夜蛾の脳裏にウェディングドレスに身をつつむAAAの姿が浮かんだが新郎の席に伊地知はいなかったので、ぐっと眉間に皺が寄る。想像でさえ2人でいる未来がみえないのだから、現実はなんともならない。
「……あー…うん。あはっごっめーん潔高くん!なんか変な空気作っちゃったね?いやはや申し訳ない!ごめんね夜蛾センセ!気にしないで!」
「嗚呼」
「まー、でも?でもさ、術師と非術師の世界は地続きだよ、潔高くん、夜蛾センセ。そこに線をひける奴なんていない、私たちみんな両足でどっちも踏んでるんだよ。」
どっちも世界には必要な悪人だから仕方ないよね。と笑うAAAは嫌に大人びていて、この子も私より先に死んでしまうのかと夜蛾は鼻がツンとした。
加茂AAA
加茂家に生まれた伊地知と同級生の女。術式ないうえ問題児だったためお家から縁切られた。五条派。術式無し。呪力で殴って祓うぞ!な脳筋。たぶん渋谷事変で死ぬ。
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