夕陽に照らされた街並みはぎらついた風景に見えて目を細めて、足を止めた。隣で鼻歌に合わせてゆらゆら揺れながら歩いていた知子が、歩調を合わせるようにゆっくりと止まる。
「どうかした?AAAくん」
「……いや、なんでもない」
「ふぅん?…あ、もしかして忘れ物しちゃった?」
「別に…」
バイクを再度おして変わらない田舎道を歩き出せば、知子はぷうっと頬を膨らませながらついてくる。
なにか、なにかがあった気がしたんだけど…忘れてしまった。課題か、バイクのガソリンか、買い物か……ぐるりと首を回したが思い出せないから諦めよう。不思議そうな顔に変わってしまっていた知子の頭を撫でてにっと笑うと、彼女は少し安心したように小さく笑ってくれる。
「知子、最近なんかあった?」
「別にないよ。AAAくん、1ヶ月も学校泊まり込みだもんね」
「寮だってば。これでも頻繁に帰ってる方だからな?夏休みも寮だからその前に帰って来たかったし…」
「おじさんとおばさんは?今日家にいるの?」
「さあ?居ないんじゃないか?飯食いに行っていい?」
「いいと思うよ〜」
なぜか首の後ろがぞわっとする、誰かにずっと見られてるみたいな感覚がしてゆっくり息を吐いた。後ろが見れない。
「あ、求導師様!」
「知子ちゃん…と……?」
「お久しぶりです、AAAですよ」
「わあっ!お久しぶりです、ちょっと見ないうちに大きくなりましたね!」
求導師様はハの字の眉のまま笑った、変わらないこの弱々しさをまといながら大人になった求導師様は何年かぶりに見たが相変わらずな気がする。いい意味で相変わらずってやつだ。
「立ち話してる場合じゃありませんよ、もう遅いですから帰りましょうね」
「え?でもまだ5時のサイレン鳴ってないよ?」
「うわっ、ほんとだ。5時すぎてる…」
「あれ?おかしいですね…等々放送機壊れたかな?」
見上げるようにスピーカーを見たが一向に鳴る気配は無いまま、うっすらと見える靄。煙のようで霧のようだ、目がおかしいのかとまばたきを繰り返してしまうと消えてしまったのだが…。
「どうしたの、AAAくん」
「……いや、うん…なんでもない」
ああ、こわい。こわい。あそこからまるで人が違ったように此方を見て睨んでいる赤い女がこわい、こわいこわい。
「俺、機械には強いですから明日見に行きましょうか?」
ぱああっと明るくなった求導師様のよこで知子ちゃんまで私も行く!と勢いよく手を上げた。
ああ、こわいこわい、そちらに向けない俺がこわいこわい



(元ネタ:堕辰子とは逆置にいる土地神に憑かれた男子学生がいる限りサイレンは鳴らない)


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