ライブラの面子が走り回って追い詰めていた山があっさりと私たちHLPDに片付けられてしまったことに、連中はあまりいい顔はしなかった。そりゃあ、準備万端で走り回って追い詰めかけてた山がもうHLPDにより粗方片付けられていたなら不快だろう。逆なら私たちもそうだ。しかし今回ばかりは連中が一歩、否数歩遅かったから仕方ない。仕方ない筈なんだがその山が終わった数日後、いわば今日、ライブラのくえないイケメン傷男(警部補命名)さんに足止めを食らってしまった。さっきまでHLを見回りしていた私をカフェテラスに捕まえて。前回はレストランで、前々回は脇道、その前はチェーン店だった。
先程まで警部補と話していた彼の携帯は胸元に片付けられている。
「悪いね、君を引き止めたら警部補が来るのわかったから」
「そうですか。」
「なにか飲むかい?奢るよ」
「いいえ、勤務中に一般市民から奢りなんていけないわ」
「…本音は?」
「本当にそうなのよ、Mr.」
カフェテラスにいるからなにか頼まなきゃならないけれど奢りはいけない。財布の所持金を思い出しながらメニューに目をうつした。
私たちHLPDの婦警は一般市民からの奢りなどを勤務中にモノをもらってはいけない。警部補やその部下の警官に所属する男性ならば別に大した問題にはならないが、婦警というか女性たちはそれが問題になる。問題というか、なんというか、そういった目的で近づく輩が少なくないため婦警にはそういったことが暗黙のルールになっている。
「すみません、ブレンドコーヒーをブラックでひとつ。Mr.は?」
「嗚呼、じゃあコーヒー、同じのを」
「かしこまりました」
ウェイターはさっさと行ってしまう。彼と2人の世界は冷たく、恐々としている気がして息がしづらいが嫌いではなかった。
「それで、また、警部補の心労を増やす気でいらっしゃるのかしら?」
「やだな、そんな気はないよ」
「そう」
会話は打ち止め、裏を読んだり探ったりは得意じゃない。早々にテラスから見える街並みに視線をうつし、行き交う守るべき全ての種族を見る。これらを守ることが私の生きがいで、意味。
「君は、本当にこちらに向いてる気がするよ」
「御冗談を、Mr.」
彼も私の守るべき種族なのだと、ただ他の人よりほんの少し強いだけの人間という種族なのだと、警部補がやってくるであろう道先を見ながら彼の顔を見る気にはなれなかった。


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