ほぼおやつの時間に近い人もまばらな食堂で、AAAさんが頼んだ食べかけのカレーが吹き飛ぶ。長机も、相席用の椅子も、水の入ったグラスも、周りで普通に食事をしていただけの海兵たちも。無惨にも吹っ飛ぶ。
「な?!」
「…」
カレーを吹き飛ばされた本人である上司はあいも変わらずな表情のままスプーンに残っていたカレーを食べきり、驚いている此方すら気にもとめず、スプーンでとんで向かってきた拳をトン、と止める。ぶわり、と風が舞い上がった。
「なんだ、食事中だぞ」
「関係ない!」
「関係あるぞ、ここは食事をする場所だ。そしてわたしは食事をしていた、昼休みだからな、ここが闘技場とかなら許したが、食堂だ。関係ある。」
スプーンをぽい、とこちらに寄越しどこか見当違いな返事をしてみせる上司に、拳を出した海兵で先生であるゼファーさんの顔が真っ赤になる。包帯だらけの体がとても痛々しくみえた。
「うるさい!貴様、貴様ァ!出会ったときの言葉の意味を理解したぞ!!貴様知っていたな!?」
叫ぶ声もなにがなんやらわからないためにざわつく周りも、一番近くにいる俺すらわからない。
この食堂にいる大抵の海兵、もちろん目の前にいるゼファーさんより古株なAAAさんは、ゼファーさんより階級は下な人である。実力主義な海軍でそこまで力持たず戦術を駆使できるタイプではなく事務作業を好む彼女は上に上がる事に興味がないらしい、とはだいたいの彼女の部署を通った海兵が知っている事柄だ。本人も公言している事実である。それを嫌う海兵もいるが、でも、ゼファーさんと仲が悪いと言った話は聞いたことがない。ゼファーさんが海兵に入ったときにはAAAさんはもういたらしいし、ゼファーさんの上司をやったことがあることはゼファーさん自身が(ガープさんと一緒に高い酒や飯を奢ってもらうために)高々に宣言しているのを見たことがある。ここ何年かはゼファーさんが先生になったことにより減少していることも知っている。普段、部署も違えば階級も違うが関係なく話しているのはたまに見るし、そこに嫌悪はひとつもなかったはずだ。
なのに、何故、こんなにもわかりやすい殺気が彼女に向けられているのだろうか。誰もなにもわからず、誰も彼女を助けに入ろうなど、彼を止めれる者はいない。食堂に嫌な風が吹くようで、だれかが唾を飲む。
「やっとわかったのか、そうか。殴るか?」
言い終わるか終わらないかというタイミングで彼女はゼファーさんに殴られて食堂の壁に吹っ飛んでいった。
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