※ロジャー処刑後/レイリーと
「どうするんだ」
レイリーの声はいつもより幾分か低く、乾いている。酒と涙でそうなったことをこの前のように、船に乗って女に振られたり喧嘩に負けていた時のように茶化すことができないでいた。
「帰るつもりだけど」
「帰れるのか」
心配だと顔に出したレイリーに笑みを向けてやる。
故郷から追い出されるように、いつの間にかこの世界にきていた私。ロジャーにひきつれられて船に入って仲間になっていた間は帰ることができないだろうと思っていた。
「なんとなくね、わかるの。今なら帰れるって。」
そう感じる。ロジャーの病気がひどくなるにつれて、処刑が近づくにつれて増していたおかしな感覚が、彼がいない今ははっきりとそう感じてしまう。確かに、落ちてきた場所に行けば帰れる、とわかってしまった。
たぶん、おそらく、この世界に来たのは、ロジャーに呼ばれたからだ。ロジャーの無意識な「なにか」の呼びに世界は私を落とした、ただそれだけのこと。だからロジャーの死によってこの世界との縁はなくなるのだろう。もちろんこのままこの世界でひとり気長に海賊を続けることもできるし、バギーやシャンクスが誘ってくれた海に向かうのも楽しそうでもある。昔みたいに街に馴染みながらバニーガールをするのもありだろう。でも、私の世界は故郷はここではないのだ。いつか絶対に泣きながらでも帰りたくなる日がくるなら、もう帰れる時(それが今である)に帰ってしまいたかった。ロジャーの死は意外と私をも傷つけているようで、自分でも苦笑いになってしまう。
「そうか」
「そうなんだわ。まあ、たぶんまた誰かが呼んだら故郷から追い出されそうなんだけど、それはそれとして」
「おくってやろうか」
空気が止まった。風の音がしっかり聞こえるぐらいには。私は馬鹿みたいな表情をしているのだろう、レイリーの破茶滅茶にかっこいい顔がすこし笑っている。そんな言葉がレイリーから出てくるとは思ってなかった。
「なんだ、どう言いそうなんだ」
「うわ、口に出してた?」
「出ている。で?どうなんだ」
「いや、おくってくれるならありがたいけど…、レイリーは案外引き止めそうだったから…」
引き止めそうだった、もちろん仮定ではあるが、そうなりそうだったからこの話はレイリーを最後にしたのだ。シャンクスには早々に挨拶をしたし、バギーには慰めながらもシャンクスより後ではあったが早めに挨拶はした。ある程度理解を示してくれそうな面子には故郷に帰るわ、と軽く言って軽く挨拶をし別れた。上記の彼らにはまた会えるような期待を持たせてしまうような挨拶になったことに少しばかり罪悪感を持ってはいる。ギャバンには懇々と説明をしながら変えることはできないと言って、しっかりさようならをした。もう会えることはないと、2人ともわかってしっかり離別とやらをした。これでレイリーがなにか言っても「みんなにさよならをした」という理由をつけて離れてしまえるだろうと思っていた。しかし、蓋を開けたらこれだ。私の読みは見事外れたらしい。心配は必要なかったということだろう。ほっと息を吐いてしまう。
「AAA」
レイリーは凪いでいる海を横目にみた後、しっかりと口元を笑みに変えてこちらの目を射抜く。呼ばれた名前にその視線にぞぞっとした感覚にしくったな、と思ったが時すでに遅い。帽子にしまっている兎耳が震えた。
「もちろん引き止めるつもりだ。ギャバンから釘を刺されていようと、お前になにを言われようと」
ギャバン釘さしといてくれたのかお前!!ありがとう!なんの役にも立ってないけど!その心だけで私の心はすこし平穏を取り戻しました!!
「お前をあの島までおくって行く間にあれこれやってやるんだよ、覚悟しとけAAA」
「ヒェッ」
昔ロジャーに海賊に誘われた、バニーガールをしていたあの島まで結構な距離があることを思い出しながら慣れ親しんだ悪どい笑みのレイリーに喉がきゅうっと音を立てる。
「お手柔らかに、どうぞ」
無理だろうな、とはお互い言わなかった。宣言された時点で逃げ場ないのだ。いや、まぁ、逃げのびて帰るつもりだけど。
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