「お前が、我らジェルマを追い詰めていた者だな」
大男が話しかけた相手は、先日まで我が国をジェルマの侵略から遠ざけ撃退し自国をある程度まで確立させてみせてくれていたまだ少年の域を出ない、AAAである。大量の情報を集め駆使し、見たこともない作戦を作り上げ、最低限の負傷者で最低限の侵略で済むように計画を立てつづけ戦争の最前線にあるキャンプ地ともいいがたい拠点に席を置いていた彼は、先日、自国の、仲間であるはずの、彼を妬むものにより刺され重傷として最前線から安全な都市まで搬送されてきていた病人だ。その際の傷が深く彼が寝入っている間に戦争は負け戦となり、我が国は彼らの傘下という名の捕虜になった。残念だが、戦争が終わって負けた国の定めだ。それを知った彼はひどく悲しみ、しかし瞳の中の強さは失われていなかった。
それを聞きつけたのか、なんなのか、病室に来た我が国の政府関係者とこの大男、ヴィンスモーク・ジャッジは傷の治りきらない彼、AAAと向き合って話し出す。医者が止めたが逆らえる雰囲気は無かった。
「あなた方を追いつめていたつもりはありません。国が侵略され奪われていくのが耐えきれずに持ち得る力を使って我々の国を維持していただけです。それが結果的にあなた方を追いつめていたことになっただけなのです。」
揺るがない、強い意志を持ったAAAの瞳はジャッジからそらされることはない。
「よく口がまわるな」
「ありがとうございます」
「褒めていないぞ、餓鬼」
「ははは、その餓鬼に追いつめていたのか、と聞くあなたの感性が相変わらず理解できない」
お互いが戦争で理解したのは戦争内での思考で、常にある平穏に暮らしているであろう思考などは分かり得ない。片方はただの平民であり、もう片方は王族だ。生い立ちも、生活の違いも、価値観もまるっきり違うのだ。
「この国の戦争は終わった、しかし、ジェルマ66にはまだまだ終わらないのだ。」
「そうでしょうね、戦争屋」
「殺してやろうか」
「殺すならしっかりとした罪状、いわば、戦争で軍を指揮していた罰として裁いてください。あなたの私情で殺されるなんてまっぴらだ」
一触即発、とはこのことだろうか、と泣きそうな医者が震えている。野次馬をしていた入院患者もAAAの見舞いに来た戦友もぶるり、と震えた。
「貴様、親族がいないようだな」
「プライバシーとかないんですかね?」
「その頭がほしい。我がジェルマに力を貸せ」
そのときのAAAの顔はなんとも言えない、苦いものを飲み込みきれなかったような、そんな顔をしていた。
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