やあ、おはよう。1週間、屋敷にしかいなかった者よ。
さて、こんなちっぽけな部屋でお前の言う夢を終わらす気なんて、ないだろう?ないといいなさい。
外に出て、劇的なことに遭遇せねば、夢を見ている価値があると思えるのか?否!思えていない!
なに?花の世話?
いい、あれは、お前の仕事じゃない。それに、あれに近づかなくてもいいと私は言ったが?
……そうだな、養子、だなんて役どころはどうだ。いいじゃないか。素晴らしい役だ、お前みたいなしんだように生きている夢見人にぴったりだと思わんかね?
ほう?私の価値が下がると?まあ、そうだな。
狂人らしさは下がるだろうが、人間らしさ、とやらは上がるだろうよ。「あいつにも人間らしい一面があったのか」ってね。「人を引き取る心があったのか」とね。
子供がいるとわかっただけで世間の目は変わる。さらに、1人になってしまったかわいそうな娘、を引き取ったとなればまた目はかわるだろう。血のつながりはぼかしておくから、お前もそうしなさい。笑んでおくだけで勝手に向こうが解釈するだろ。
いい役だろう?
……………よし、その返事を待っていた!
そうだ、和服が嫌いなんだって?だからってそのよくわからん薄着で出るなよ。適当に街で見繕ってやるから、そんな顔するな。コートも着ろ。凍えたいのか?
さあ、好きに遊べよ、お前の夢の中だというこの世界で。

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