昼なのに体が冷えることを理由に小さい桶にお湯を満たしてもらい足をつけて温めながらぴちゃぴちゃしていた矢先に、あまりにも近いところでダァァンっと響く銃声。びっくりして一瞬固まる私とは違い、すぐさま護衛してくれている鶴見さんの部下である軍人さんが窓を開けて確認してくれる。びゅうっと入ってきた寒い風に震える。
「鶴見中尉の銃声です、心配なさらず。…なにやら男を捕まえたようです」
「男…」
どこぞの(鶴見中尉にとって)悪いやつが捕まったのだろう。拳銃をもつ軍人に囲まれる夢を見ている割りに全然慣れない自分にため息をつきながら手ぬぐいで足をさっと拭き、靴下と靴を履きお湯を満たした樽を持ち上げる。容易足湯はお開きにしてあたたまった足のまま部屋に帰って寝よう。ゆっくり寝れそうだ。
「持ちましょうか」
「ありがとう、大丈夫です。」
戸は開けてもらい廊下に出て一階に降り、庭のような庭ではないような、ほとんど踏みしめられた乱雑な土壌の脇にお湯を流して、樽を乾かすように立て掛ける。
と先ほどの男が連行されているのが見えたらしい軍人さんが「こちらに」とすぐさま私の視界にもたぶんおそらく向こうからの視界にも入らないように体をずらして導いてくれる。ありがたく受け入れながらちらっとのぞく。
顔に大きな傷跡がある、若い男だ。
周りには二階堂兄弟や鶴見さんがいる。怪我をしているのはあの男だけだから、鶴見さんが怪我をしたとかはなさそうだ。
「さぁ、部屋に帰りましょう」
軍人さんの言葉にこくりと頷いた。

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