通用しないときがあるんですか?

(両者・最新刊まで読破、しかし第1主は曖昧に記憶)


「ラクロ…ナニ、ココ?」
「よく…知らないけど…そ、総理大臣の…お家かな…?しってます?」
「内閣総理大臣官邸、家っていうより仕事場に近いんじゃないか?」
「ここ会議室か会見室みたいなところだしねぇ」

1つの椅子に2人で座る緑朗と青一に、その椅子の隣に座るサヤカと寄り添うように立つハヤトは簡単な答えを返した。実際2人も内閣総理大臣官邸なんてものには入ったことがないため曖昧なものしか答えられない。4人で曖昧につながれた会話はなんともあやふやで頼りない。

「ソーリ…シッテル…エライヒト…」
「うん…僕らになんの用だろう…」
「国のえらぁいヒトだもんねぇ、なんの用だろうねぇ」

甘い声を出したサヤカにギロリと冷たい視線が降り注ぐ。緑朗たち2人が気づいた様子はないが、サヤカはいたって本気で殺気などは含まれていないがそれでもその冷たい視線を注ぐ張本人であるハヤトにもにっこり笑ってみせる。

「白々しい…」
「あはっ」

知っているくせに、と含まれた声にもう一度声を出してサヤカは笑う。何でもないような会話は、もちろん先を知る2人であるから成立する会話でもある。

「コレナニ?」
「え?ああ、モナカだね、お菓子だよ。」
「あんこの入った甘いお菓子よぉ」
「だめだよ、ホラ、こうやって包み紙をはずして…」

モグ、と食べた後花開いたような輝かな笑顔が青一の顔に現れて「オイシ〜!」と声をあげた。そのため、緑朗の問いは掻き消され、ハヤトの冷めた目も消え去る。サヤカが愛しい「美味しいよねぇ〜、かわいぃ〜」と青一の頭をわしゃわしゃと愛玩動物並みに可愛がられて撫でられている。

「あ、ハヤト、これからのことに手を出しちゃだめだよぉ?」
「わかった」

これからのこと、赤外線照射と光増幅管付き暗視ゴーグルを着けた総理大臣とその付き添いの方々が2人を試すために行われる暗闇の中のことを指している。サヤカの笑みを理解しない緑朗がまた首を傾げれば、まるで示し合わせたように戸が開き、沢山の人が入ってくる。

「あ…こ、こんにちは…」

にんまり笑っているサヤカと微動だにしないハヤトだけが、ほんの少しだけこの先を知っている。

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