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何度目だろうかと暗くなる気持ちを抑えてまた今日も。
本当は仕事なんて辞めた方がいいのは自分が一番わかっている。
若いのにという冷ややかな眼差しにいつ慣れてしまったなんてもう忘れてしまった。
「今回もダメでした」
そう突きつけられる言葉は今も慣れない。慣れちゃいけない。
「木村さん、顕微授精をなさってみてはどうでしょうか。」
もうそれに懸けるしかないのだと医者は言う。
今までとは比べ物にならないほどお金が掛かる。ここまでして子どもを望むのはいけないのではないかと思ってしまう。
「一度、旦那さんとも話し合って下さい。子どもが欲しい、生みたい、お母さんになりたいと思うことは何も悪くはありません。」
小さいころからお母さんみたいなお母さんになりたいと思っていたし、仁が結婚し親になりその気持ちは珠希の中で多く膨らんだ。
小さな歩幅で前へ進み、珠希が着いたのは準備中と札が掛かった母の店だった。
「あら珠希。来たの。今日は何食べる?」
「それどころじゃない。いらない。」
「…食べないと」
「お母さんに私の苦しみが…わか、る、わけ…」
今まで溜め込んでいたかのように珠希の目からは次から次に涙が溢れた。
「辛かったのね。ごめんなさいね。お母さん、珠希の気持ちわかってやれなくて…」
「ち、がぅ。お母さんは悪くない…。当たってごめんなさい」
「いいのよ。だって珠希のお母さんだもの」
そっと抱き寄せられた母のぬくもりは何にも代えられなかった。
「あらまあ。寝ちゃって」
泣き疲れた珠希は鼻を赤くして眠っていた。
母は良平に連絡を入れた。良平は仕事がちょうど終わった頃で足早に珠希を迎えに行った。
母のぬくもりとはまた少し違う、大好きなぬくもりが珠希を包む。
「……あれ?」
「起きた?」
「うん」
ここは他でもない自宅の寝室だった。
「珠希、俺に言うことはない?」
ベッドに二人で横になって、良平は珠希をしっかりと抱きしめていた。それに応えるかのようにまた珠希も良平を抱きしめた。
「あるよ。いっぱい…。聞いてくれる?」
「うん。聞かせて。」
良平の胸に顔をうずめ、ぽつり、ぽつりと声を出した。
それを何も言わず最後まで良平は聞いた。
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