彼女はそれを全く厭わずやってのけた。
勿論、僕だって彼の死を一般的な「穢れ」や「生からの救済」などと思うつもりは無い。
彼の死はその「尊厳の塊」であり「敬意を払うべきこと」である。
それ無くては、今ここに僕も彼女もいないだろう。
しかし、彼の遺体は闘いの中の傷だけではなく、そこにあるはずの無かった海水のせいでひどく損傷していた。
スティール氏の計らいにより、出来る限り美しく整えられたそれは、見る影もないという程ではないが、やはり痛々しくてまっすぐ見つめるのに少し躊躇するほどだ。
だがななしは、ジャイロの遺体の頬を撫で愛おしそうに見つめた。
そして、額、両の瞼、唇へとキスを落としたのだ。
友情、憧れ、そして愛情を示すと、もう1度だけ愛情を確かめるように唇へキスをした。
それから、右頬・左頬の順で頬を剃り寄せた。
彼らの故郷では、親しい間柄で行う挨拶だそう。
最後に一筋の涙を流した後、こう言った。
「少しの間、おやすみなさいジャイロ。またすぐに会えるわ。どうか私を忘れないで」