鮮やかな紅葉の絨毯に、縁取られたように浮き出るスカイブルーが僕を魅了する。
そして彼女の瞳の中にある宇宙は、燃えるような赤を帯びて。
そこには、夕焼け空に星屑が舞っていた。
僕は彼女の瞳が一等好きだ。
自分はこの忌々しい目が嫌いなんだと言う彼女に、それでも好きだよと伝えるのが僕の役目。
でも、それは彼女を慰めたりするつもりじゃなくて本心なんだ。
本物の星空なんかより、よっぽど綺麗で。
その瞳が僕を写す度に、僕は広い宇宙を漂っているような気分になる。
星屑が煌めく彼女の視界を、僕が奪っているから。
そして僕は、その瞳の変化も好きだ。
今みたいに、青い瞳の表面を赤が覆って。
目の前の美しい風景を穏やかに眺めるその目元が、煌々と輝く。
夕焼け空に、星が光る。
この瞬間を、その色を―――
逃してはいけない。
僕は僕の中の使命感に駆られた。
カメラを構えて、そっとシャッターを切る。
無音でゆっくりと過ぎ去る時間の中に鋭く響いたそれは、彼女を捕えたいと強く願う僕の意思のよう。
その音に…もしかしたらその意思に、気付いてこちらを向く彼女。
夕焼けに輝く星屑が消えて、代わりに果実が弾けるような煌めく笑顔が現れる。
瞳を開いている時も閉じている時も、僕には彼女が輝いて見える。
あの旅の中で救われたってだけじゃない。
初めて彼女を目にした時から、そこには女神がいたんだ。
それは今も変わらない。
女神の微笑みに、僕はまた、シャッターを切った。
途端、強い風が吹く。
舞い上がる赤に、靡くスカイブルー。
その青が踊る中に陽の光が差し込んで、虹色に輝いていた。
そして風に乗る彼女の花の香り。
僕は夢中でシャッターを切る。
けれど、分かっている。
家に帰っていくら見返したところで、そこには虹色に輝く髪などは写っていないこと。
確かに美しい赤と青は写るだろう。
でも今僕が見ているこの幻想的な風景は、僕の瞳だからこそ見えている風景なんだ。
僕の瞳に写る彼女は、いつも輝いている。
他の誰が見るよりもずっと、一番輝いているんだ。
風が止む。
乱れた髪を整える彼女。
艶のいい真っ直ぐな髪はその指の流れに素直に従う。
その感触だって、僕は知っている。
身形を整えた彼女はまた穏やかに微笑んだ。
そして暖かい声が、秋口の寒さのせいでほんのり赤く染まった僕の耳を包み込む。
「花京院」
朱色に包まれたスカイブルー。
風に靡く虹色の輝き。
僕だけに許されたその色。