薙切えりな

(百合注意)

机の下でこっそりと手を繋ぐ。

これが数学の時間の私の楽しみだった。



私が今付き合ってる人を紹介しよう。
名前は薙切えりな。遠月学園の生徒の中でも別格である十傑評議会の、第十席のカノジョ。
遠月の学生なら誰でも知っている、いや、知っていて当たり前のアノ子。
なんならその筋で知らない人はいないと言っても過言ではない、神の舌を持って生まれた少女。
肩書きなんて考えればいくらでも見つかるような、才智に恵まれ、容姿までもが完璧な、えりなちゃん。
まさにその人が私の彼女なのだ。



えりなちゃんはとっても優しくて、時たま浮かべる柔らかなあの笑顔がとっても素敵なの。
周りにほかの人がいるとツンツンしているけれど二人っきりになるとよく笑ってくれるんだ。
育ちのせいなのか世間に疎いところもあるけど一緒にいるだけで楽しいの。




私とえりなちゃんは付き合ってるからと言って毎日会えている訳では無い。
とってる科目、入れてる時間が同じになるのは週に2回の数学の時間だけ。
えりなちゃんは十傑の仕事だけじゃなくて他にもいろいろなオシゴトがあるからね、なかなか時間があかないんだ。
だからこの2時間はとっても大切。この授業にさえ出ればえりなちゃんに会えるんだもん。
流石にセンセイも生徒もいるからね、キスは出来ないけどコッソリと、誰にも見つからないように手を繋ぐの。
女の子同士だから手を繋いでても変に思われないはずなのに、教室だから、授業中だから、バレちゃうかもしれないから、そんな思い込みが私たちの心拍数を上げていく。
不埒で、淫靡なことをしている気分にさせる。
慣れることなんて、ない。
手を繋いでいる間はいつだって永遠であり瞬間のように感じる。
私の感覚全てを鈍らせる。
他のどんな食材、料理でも味わったことのないような甘酸っぱい恋愛。
えりなちゃんだけが、特別。





私はえりなちゃんが好きだしホントはもっと一緒にいたい。傍にいたい。
でもそれ以上に私はちっぽけな存在だから、遠月に残っていたいから、恋よりも自分を優先させちゃうの。
自分のために特別なものを捨てちゃうの。


わたしは薊総帥に従うよ。
ごめんねえりなちゃん。